コラム

足関節の異常運動「過度の背屈」の歩行分析を各相別で紹介

歩行分析において、正常とは違う異常運動を見極め、原因を追求することは大切です。

しかし、「正常とは何か違うけど、それが何なのか漠然としている」「足関節に異常がある場合、どのような歩行になるのか知りたい」などの悩みを抱える理学療法士さんは多いと思います。

漠然と見て歩行分析をするのは至難の業ですが、体の各関節ごとにどのような異常運動があるかを理解しておくと、歩行分析がしやすくなります。

そこで、この記事では、足関節の異常運動「過度の背屈」が歩行に与える影響についてご説明致します。

足関節の異常運動「過度の背屈」の歩行分析

足関節の異常運動「過度の背屈」とは、ニュートラルゼロポジションを超えた背屈を表しています。

「過度の背屈」の歩行分析として、立脚期においては、立脚中期5°と立脚終期10°以外のすべての相で、歩行のメカニズムを機能的に阻害することがあります。

角度がわずかなので、立脚中期と立脚終期で背屈が過度か否かは観察が困難です。

これらの相での膝関節屈曲と立脚終期での踵離れの乏しさは、過度の背屈を示します。

過度の背屈の概念は、“正常な底屈の乏しさ”を示すことにも用いられます。

そのような異常運動は、荷重応答期、前遊脚期、遊脚初期で出現することがあります。

過度の背屈は遊脚相よりも立脚相で機能的に関わります。

足関節の「過度の背屈」が歩行周期の各相に及ぼす影響

歩行周期の各相ごとに、足関節の過度の背屈がどのような影響を与えるのか、それぞれの特徴について挙げていくので、確認していきましょう。

初期接地

過度の背屈が時々出現し、不安定な状況を示します。

ヒールロッカー機能が過度に出現します。

荷重応答期

2つの過度の背屈の形態が可能となります。

●フットフラット(足裏全体で接地すること)で初期接地し、引き続き過度の背屈:フットフラットで初期接地し、通常はヒールロッカー機能に伴う底屈10°の可動域が阻害されます。

そしてその後、体重が負荷されると過度の背屈が起こります。

●足関節の正常な底屈の阻害:たとえば足関節の強直や底屈制限をつけた装具の装着によって足関節がニュートラルゼロポジションで固定されると、下腿が荷重応答期で前足部が床へ向かう速度に比例して前方へ働きます。

その結果、正常の2倍の動きの膝関節屈曲を伴う過度のヒールロッカー機能が起こり、それに直結して大腿四頭筋の遠心性の活動要求が高まります。

立脚中期

立脚中期では、過度の背屈が機能的に意味を成す2つの状況が生まれます。

●反対側の遊脚肢の勢いが身体を前方へ動かし、立脚肢の下腿がその動きについていくと、はじめは底屈位にあった足関節に急激な背屈が生じます。

その際、ほとんどのケースにおいて正常な受動的可動域である10°の背屈位を超えることはありません。

しかし、すでに単脚支持期の始まりに足関節は過度に背屈しているので、患者さんは不安感を経験します。

●下腿と足の間の正常な角度が10°以上となる状況は、特に立脚終期で観察されます。

両方の状況で、すなわち下腿の動きの速度上昇と過度の背屈の動きによって大腿四頭筋の活動への要求は高まります。

同時に下腿の制御の欠如は、同時期に大腿四頭筋が膝関節を完全伸展できない状況をつくりだします。

立脚終期

立脚終期において、膝関節屈曲とともに踵離れが観察される場合、過度の背屈を確認するのは困難です。

この両方の出来事は、主たる問題を見えにくくしています。

踵が立脚終期でも離床せずに床に接地している場合は、過度の背屈が顕著となります。

前遊脚期

正常な20°の底屈が減少していれば、足関節に過度の背屈が存在しています。

殆どの場合、踵離れが遅れます。

体幹はすでに観察肢より前方へ位置し、下腿は正常な範囲を超えて前方へ倒れます。

遊脚初期、遊脚中期、遊脚後期

足関節は遊脚相で、ニュートラルゼロポジションからほんのわずかに超えて動きます。

臨床的に重要なのは、初期接地のときの足関節のポジションのみです。

足関節の「過度の背屈」の原因

以下の3つの原因が足関節を過度に背屈させます。

下腿三頭筋の筋力不足

下腿三頭筋の筋力不足は、不活動性、完全麻痺、アキレス腱に対する延長術などにより引き起こされることがあります。

ヒラメ筋の不十分な遠心性制御の筋力は、単脚支持期で下腿の安定性不足につながり、それによって大腿四頭筋への筋力要求が高まります。

立脚中期において、下腿が足の真上を超えて前方へ向かう動きは、足関節を素早く過剰に背屈させます。

その際重要なのは、脛骨が身体の前方への動きに従うこと、すなわち過度のアンクルロッカー機能が起こることです。

過度に前方に倒れた脛骨は膝関節を屈曲させ、大腿四頭筋の活動の維持を要求します。

大腿四頭筋は、脛骨による安定したサポートが乏しいので、これ以上膝関節を伸展することができません。

ヒラメ筋をサポートするための腓腹筋の活動不足は、膝関節のさらなる屈曲に関与し、それによって付加的に大腿四頭筋への筋力要求は高まります。

下腿三頭筋の筋力不足が歩行のメカニズムに及ぼす影響は、反対側の歩幅減少と歩行速度の低下、立脚相で膝関節屈曲の増大と、それに直結する大腿四頭筋の筋力要求の増大です。

足関節のニュートラル・ゼロ・ポジション固定

足関節がニュートラルゼロポジションに固定されている例は、関節固定術や硬いAFOです。

荷重応答期で正常な底屈の動きが阻害され、過度なヒールロッカー機能が生じます。

足が踵を支点にして床へ向かって落ちていくことに比例し、下腿が大きく前方へ動きます。

結果として足の落下速度と同じ速さで膝関節が曲がり、大腿四頭筋への筋力要求がそれ相応に高まります。

立脚相における膝関節の屈曲拘縮

立脚中期において膝関節の屈曲が持続されると、足関節の過度の背屈が生じます。

それは身体重心を支持面の直上にポジショニングするためで、立脚相で身体のバランスを保持しています。

背屈の大きさは、膝関節の屈曲拘縮の大きさに比例します。

まとめ

足関節の異常運動「過度の背屈」が歩行に与える影響についてご説明致しました。

背屈制限により異常歩行をきたす場合は散見しますが、過度の背屈つまり“背屈し過ぎ”も多くの問題を引き起こし、歩行にさまざまな影響を与えていることをご理解頂けたのではないかと思います。

明日からの臨床に活かしていきましょう。

また、歩行分析において、異常運動を観察し評価を進めるために、まず健常歩行の機能ならびにメカニズムを正しく理解しなければなりません。

歩行の各相における関節と筋肉の動き距骨下関節の角度と動き足関節と中足指節間関節の角度と動きを、健常歩行における足関節についてご紹介していますので、こちらもご参照下さい。

〈参考文献〉

1)Kirsten Gotz-Neumann (2014) 観察による歩行分析 原著 第1版第14刷 医学書院

執筆者紹介

AYUMIEYE事務局

AYUMI EYEとは、早稲田エルダリーヘルス事業団が開発した 最先端の歩行能力解析デバイスです。

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