コラム

歩行運動とリズムの関係とは?CPGの機能低下とリズムの改善について

歩行分析でよく耳にする「リズミカルな歩行」とは、どういった意味を指すのでしょうか。

そもそも歩行運動とリズムには、どのような関係があるのでしょうか。

人間は、生まれる前から歩行運動のリズムにおける神経回路が備わっています。

それはつまり、脳神経全般が関与しているということが言えます。

この記事では、歩行運動とリズムの関係についてわかりやすく解説します。

そして、患者さんの歩行リズムを改善するためにはどうすれば良いのか、そのアプローチについてもご紹介します。

歩行運動とリズムの関係

人間の直立2足歩行の詳細なメカニズムは未だ解明されていませんが、歩行運動とリズムに関するさまざまな研究が報告されています。

歩行は、外部の環境に応じた適切な調整が必要であり、脳神経系全般、つまり中枢神経が関与していることが明らかになっています。

歩行運動は、上位中枢である大脳皮質、そして小脳や脳幹などの調整系からの入力(意図的な歩行動作に関与)により、下位の中枢(意図的な関与は少なくなり自動的)が働くことで歩行リズムのパターンが作られている仕組みとなっています。

歩行のリズムにおける “ ゆらぎ ” とは?

歩行リズムを考える上で、近年注目されているのが、歩行の “ ゆらぎ ” です。

ゆらぎとは、規則的な性質と不規則的な性質を含む、空間および時間的なリズムの変化のことを示します。

人間の歩行は、一歩一歩に要するストライド時間は一定ではなく微妙に変化しています。

この微妙な変化にゆらぎの性質が含まれています。

歩行におけるゆらぎの性質は、加齢によって変化し、ゆらぎの変化によって外乱刺激への柔軟な適応が難しくなり、転倒の危険が高まるという報告があります。

そして、歩行におけるゆらぎの性質は、CPG(Central pattern generator)の機能が反映されていると言われています。

CPG(Central pattern generator)について

歩行には、筋力、筋パワー、敏捷性、平衡性、柔軟性といった運動機能が影響しています。

これらの運動機能指標のうち、特に敏捷性や平衡性は末梢神経の要素だけでなく、中枢神経の要素が影響していると言われています。

このような中枢神経系の機能として、中枢パターン発生器(Central pattern generator:CPG)があります。

新生児の足を地面につけて体を保持し、水平に動かすと、自動的な歩行運動が起こることがわかっており、これは人間に生まれる前から歩行運動の基本的な神経回路が備わっていることを示しています。

この反応は、大脳を欠損している無脳症という病気の新生児でも観られることから、大脳ではなく脳幹よりも下部、おそらく脊髄に神経回路があると考えられています。

ある研究では、脊髄損傷患者の脊髄に電極を挿入し、硬膜外刺激を行うことで、歩行用の運動を誘発することに成功したと報告しています。

これはつまり、脊髄にCPGが存在することを示していると言えます。

よって、CPGは脊髄に存在し、介在ニューロン群のネットワークにより構築され、上位中枢からの入力によって歩行運動を支配していると考えられています。

不安定な歩行とは?

前述したCPGの機能低下は、安定した歩行リズム生成が困難な状態を引き起こし、不安定な歩行の一因となることが示されています。

歩行運動では、CPGの機能が働くことによって、膝関節伸展筋群と膝関節屈曲筋群が相互に協調しています。

安定した歩行は、膝伸展筋群と膝屈曲筋群が互いを妨害せず逆位相に活動をします。

しかし、加齢変化などによってCPGの機能低下が生じると、両者の協調性が低下し、共収縮が生じてしまうため、歩行が不安定になると言われています。

すなわち、CPGの機能低下が加齢によって生じると、高齢者は若年者と比べて、大腿部に連動した下腿部の自動的な活動が難しくなります。

よって、小刻み歩行や外乱刺激に対する反応が悪くなり、上手く適応出来ず、歩行が不安定になると考えられています。

歩行リズムを改善するには?

歩行障害のある神経変性疾患の患者が、メトロノームなどの音刺激に合わせて歩行をすると、歩行障害が改善することが明らかになっており、臨床において活用されています。

一方、明らかな歩行障害がない健常な成人で、歩行が不安定と判断された者を対象とした續田らの研究によると、自らが最も歩きやすいと感じるリズムで掛け声をしながら歩行した場合、歩行リズムが安定したことを報告しています。

つまり、外的な音の刺激ではなく、自らが掛け声をしながら歩きやすいリズムで歩くことが、健常人における歩行リズムを改善する方法だと言えます。

まとめ

歩行運動とリズムの関係について、脳神経系の観点からご紹介させて頂きました。

歩行リズムを改善する方法は、明日からの臨床に活かせるポイントです。

患者さんの歩行分析に活かしていきましょう。

〈参考文献〉

1)市村大輔.リハビリテーションへの応用を見据えた脳-身体モデルの歩行シミュレーション研究.電気通信大学大学院情報理工学研究科博士(工学)の学位申請書論文.2020.3

2)續田尚美.中高齢者の歩行ゆらぎと体力の関連.同志社女子大学総合文化研究所紀要第33巻2016

3)續田尚美.健常な成人における歩行中の掛け声と歩行リズムの関係.日本生理人類学会誌.Vol21,No.2 20116.5 51-58

執筆者紹介

AYUMIEYE事務局

AYUMI EYEとは、早稲田エルダリーヘルス事業団が開発した 最先端の歩行能力解析デバイスです。

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