コラム

【歩行分析】膝関節の代表的な異常運動7つ、原因と歩行のメカニズムに及ぼす影響

歩行分析において、正常とは違う異常運動を見極め、原因を追求することは大切です。

しかし、「正常とは何か違うけど、それが何なのか漠然としている」「膝関節に異常がある場合、どのような歩行になるのか知りたい」などの悩みを抱える理学療法士さんは多いと思います。

漠然と見て歩行分析をするのは至難の業ですが、体の各関節ごとにどのような異常運動があるかを理解しておくと、歩行分析がしやすくなります。

そこで、この記事では、膝関節の異常運動が歩行に与える影響をご説明致します。

また、歩行分析において、異常運動を観察し評価を進めるために、まず健常歩行の機能ならびにメカニズムを正しく理解しなければなりません。

目次

膝関節の異常運動について

膝関節の代表的な異常運動として、以下の7つが確認されることがあります。

それぞれどのような異常運動なのか、簡単にご説明します。

1「屈曲制限」は、正常と比較して小さすぎる屈曲を示します。
2「過度の屈曲」は、正常と比較して大きすぎる屈曲を示します。
3「動揺」は、1つの相ですばやい屈曲伸展の動きを示します。
4「過伸展」は、ニュートラル・ゼロ・ポジションを超えた膝関節の伸展を示します。
5「急激な伸展」は、膝関節が激しく過伸展する動きを示します。
6「外反/内反」は、大腿骨に対する脛骨の内側もしくは外側の角度減少を示します。
7「反対側の過度の屈曲」は、荷重応答期と立脚終期における反対側の膝関節で、正常より大きい屈曲(遊脚期)を示します。

膝関節の異常運動「屈曲制限」の歩行分析

膝関節の異常運動7つの中で、「屈曲制限」の歩行分析について解説致します。

屈曲制限の原因や、歩行にどのような影響を与えるのかについて確認していきましょう。

荷重応答期における膝関節の屈曲制限とは

荷重応答期で、5〜10°しか膝関節屈曲がないのであれば、比較的可動性に乏しい脚を示し、病理的な意味を持ちます。

屈曲が完全に消失している場合は、通常は代償運動と言えます。

その時、完全伸展は患者さんにとっては安全で安心できる荷重肢位と言えます。

荷重応答期における膝関節の屈曲制限の原因

荷重応答期における膝関節の屈曲制限の原因は以下のとおりです。

・大腿四頭筋の筋力不足
・下腿三頭筋の過緊張によるフォアフットコンタクトもしくはフットフラットコンタクトに伴う二次的現象
・膝関節の疼痛
・大腿四頭筋の過緊張
・固有受容器の障害

荷重応答期において膝関節の屈曲制限が歩行のメカニズムに及ぼす影響

荷重応答期において膝関節の屈曲制限が歩行メカニズムに及ぼす影響は以下の通りです。

・衝撃吸収の減少
・下腿の前方への動きの縮小(ヒールロッカー機能不足)
・膝関節の関節包後方を損傷する危険
・歩行速度が速い患者さんは、場合によって他の関節の微細な損傷

前遊脚期と遊脚初期における膝関節の屈曲制限とは

膝関節の屈曲制限は、この両方の相で遊脚肢の前方への動きという機能的な課題に影響を及ぼします。

膝関節の屈曲が不足すると足関節は過度に背屈し、踵の接地時間が延長されます。

膝関節の屈曲によって遊脚期の準備をするという、前遊脚肢の機能的な課題が十分に満たされません。

これは、脚が離床できるための股関節と膝関節の屈筋群への髙い筋力要求へと繫がります。

遊脚初期における膝関節の屈曲制限は、脚が適切に持ち上げられず、爪先が床にこすりつけられる(トゥードラッグ)に繫がります。

前遊脚期と遊脚初期における膝関節の屈曲制限の原因

前遊脚期と遊脚初期における膝関節の屈曲制限の原因は以下の通りです。

・底屈筋群あるいは膝関節伸筋群の過緊張
・運動制御の不足
・膝関節の疼痛
・膝関節の伸展拘縮
・ハムストリングスの過緊張による大腿の前方への動きの減少
・股関節屈筋群の筋力不足による大腿の前方への動きの減少
・過度の股関節屈曲もしくは立脚終期において踵の持ち上げ不足に伴う二次的な現象

前遊脚期と遊脚初期において膝関節の屈曲制限が歩行のメカニズムに及ぼす影響

前遊脚期と遊脚初期における膝関節の屈曲制限は歩行メカニズムに及ぼす影響は以下の通りです。

・遊脚初期で爪先離れが阻害される
・前遊脚期で膝関節の屈曲制限は、一般に遊脚初期で膝関節の屈曲制限を招く
・代償運動がエネルギー消費の増大を招く

膝関節の異常運動「過度の屈曲」の歩行分析

膝関節の異常運動7つの中で、「過度の屈曲」の歩行分析について解説致します。

過度の屈曲の原因や、歩行にどのような影響を与えるのかについて確認していきましょう。

荷重応答期と立脚中期における膝関節の過度の屈曲の原因

荷重応答期と立脚中期における膝関節の過度の屈曲の原因は以下の通りです。

・膝関節の屈曲拘縮
・膝関節屈筋群の過緊張
・膝関節の疼痛
・股関節の過度の屈曲に伴う二次的な現象
・反対側の遊脚肢の有効長が短い場合、遊脚肢の踵を床に近づけるために、観測肢の立脚終期で意図的に膝関節が過度に屈曲する
・股関節の屈曲拘縮と骨盤の後傾に伴う二次的な現象
・過度の背屈に伴う二次的な現象
・大殿筋と大内転筋の筋力不足に伴う二次的な現象

荷重応答期と立脚中期において膝関節の過度の屈曲が歩行のメカニズムに及ぼす影響

荷重応答期と立脚中期における膝関節の過度の屈曲が歩行メカニズムに及ぼす影響は以下の通りです。

・下腿三頭筋と大腿四頭筋と股関節伸筋群に対する筋力要求の増大
・脚の安定性の減少

遊脚終期における膝関節の過度の屈曲の原因

遊脚期における膝関節の過度の屈曲の原因は以下の通りです。

・膝関節の屈曲拘縮
・股関節屈曲を維持しつつ、同時に膝関節を伸展する能力不足
・大腿四頭筋の筋力不足
・ハムストリングスの過緊張
・フォアフットコンタクト、フットフラットコンタクトを可能にするための意図的運動。

これらは遊脚相全般にわたって起こり得る原因ですが、特に遊脚終期においては、膝関節伸展によって歩幅が決定されるため、異常運動が歩行のメカニズムに及ぼす影響は特に重大になります。

不十分な膝関節屈曲は、遊脚終期で歩幅を減少させ、合わせて股関節屈曲も減少します。

股関節に作用する屈曲方向のモーメントは小さくなり、股関節伸筋群に対する筋力要求は減少します。

遊脚終期において膝関節の過度の屈曲が歩行のメカニズムに及ぼす影響

遊脚期における膝関節の過度の屈曲が歩行メカニズムに及ぼす影響は以下の通りです。

・観察肢の歩幅の減少
・立脚期のための脚の不十分な準備
・次に控えた初期接地にとって不都合な足のポジション

膝関節の異常運動「動揺」の歩行分析

動揺の概念は、立脚期に交互に起こる小さな膝関節の屈曲と伸展です。

この異常運動は小さな動きゆえ、訓練された目でしか確認できません。

動揺は、荷重応答期や立脚中期、立脚終期で起こります。

荷重応答期と立脚中期における動揺の原因

荷重応答期と立脚中期における動揺の原因は以下の通りです。

・固有受容器(体外からの刺激に反応する受容器)の障害
・大腿四頭筋の過緊張
・底屈筋群の過緊張

荷重応答期と立脚中期において動揺が歩行のメカニズムに及ぼす影響

荷重応答期と立脚中期における動揺が歩行メカニズムに及ぼす影響は以下の通りです。

・前方への勢いの減少
・立脚肢の安定性の低下とバランス障害

膝関節の異常運動「過伸展と急激な伸展」の歩行分析

膝関節がニュートラルゼロポジションを超えて伸展すれば、それが過伸展となります。

この動きは受動的にゆっくり起こることもあれば、早く能動的に起こることもあります。

過伸展は荷重を支持するすべての相に起こりえますが、殆どは立脚中期か立脚終期で起こり、症状の程度によっては前遊脚期まで続きます。

急激な伸展はすばやく急激に膝関節が後方へ向かう伸展の動きで、伸展の大きさはニュートラルゼロポジションを超えません。

急激な伸展は、しばしば荷重応答期で、脚に荷重が移行した直後の反射として現れます。

荷重応答期での過伸展と急激な伸展の原因

荷重応答期での過伸展と急激な伸展の原因は以下の通りです。

・大腿四頭筋の筋力不足
・固有受容器の障害
・大腿四頭筋の過緊張

荷重応答期において過伸展と急激な伸展が歩行のメカニズムに及ぼす影響

荷重応答期での過伸展と急激な伸展の原因が歩行メカニズムに及ぼす影響は以下の通りです。

・膝関節の後面にあるすべての組織を損傷する危険性
・衝撃吸収の減少
・下腿の前方への動きの減少

立脚中期と立脚終期での過伸展と急激な伸展の原因

立脚中期と立脚終期での過伸展と急激な伸展の原因は以下の通りです。

・固有受容器の障害
・大腿四頭筋の過緊張
・脚の安定性を高めるための意図的運動:膝関節の前方を通過する床反力ベクトルにより膝関節に伸展方向のモーメントが生じる
・底屈拘縮に伴う二次的現象

立脚中期と立脚終期において過伸展と急激な伸展が歩行のメカニズムに及ぼす影響

立脚中期と立脚終期での過伸展と急激な伸展が歩行メカニズムに及ぼす影響は以下の通りです。

・下腿の前方への動きの減少
・膝関節の後面にあるすべての組織を損傷する危険性

遊脚期での過伸展と急激な伸展の原因

遊脚期での過伸展と急激な伸展の原因は以下の通りです。

・固有受容器の障害
・遊脚終期で膝関節を伸展するための意図的運動

遊脚期において過伸展と急激な伸展が歩行のメカニズムに及ぼす影響

遊脚期での過伸展と急激な伸展が歩行メカニズムに及ぼす影響は以下の通りです。

・両方とも膝関節を完全伸展させることに寄与する

膝関節の異常運動「外反・内反」の歩行分析

前額面における正常な脛骨の肢位は、鉛直で大腿骨に対しては約10°外転しています。

外反X脚肢位では、脛骨の遠位端が膝関節に対して過度に外側方向へ外転しています。したがって、脚は外側にずれて位置します。

それゆえ、静止立位時で両足の間隔は、両膝の間隔よりも大きく離れています。

膝関節の外側に過剰な負荷が加わるため、膝関節の外側の構造はより早く摩耗します。

過度の内反(O脚)では、脛骨の遠位端が膝関節に対して内側へずれています。

静止立位で両側の膝関節は、両足に比べて大きく離れています。

内側半月板などの膝関節の内側の構造は強い負荷にさらされ、より早く摩耗します。

外反・内反の原因

外反・内反の原因は以下の通りです。

・関節あるいは靭帯の不安定性
・骨性の変形(先天性もしくは成長段階の原因、外傷に起因)
・距骨下関節の機能障害(たとえば膝関節外反を引き起こす距骨下の過度の回内)
・股関節外転筋群の筋力不足に対する代償運動としての体幹側屈に伴う二次的現象

立脚中期と立脚終期において外反・内反が歩行のメカニズムに及ぼす影響

・脚の安定性の低下
・膝関節の疼痛
・代償運動メカニズムの発生

膝関節の異常運動「反対側の膝関節屈曲」の歩行分析

観察肢が遊脚期にある間、反対側の膝関節が荷重応答期、立脚中期、立脚終期で過度の屈曲を示します。

観察肢の遊脚期で反対側の膝関節が過度に屈曲する原因

観察肢の遊脚期で反対側の膝関節が過度に屈曲する原因は以下の通りです。

・遊脚肢(観察肢)を地面に近づけるための意図的運動
・反対側の膝関節の過度の屈曲

観察肢の遊脚期で反対側膝関節の過度な屈曲が歩行メカニズムに及ぼす影響

観察肢の遊脚期で反対側の膝関節が過度な屈曲が歩行メカニズムに及ぼす影響は以下の通りです。

・反対側の脚が短くなり観察肢の有効長が間接的に延長
・観察肢の離床の阻害
・観察肢の前方への動きの阻害
・反対側の立脚肢のエネルギー消費の増大

〈参考文献〉

1)Kirsten Gotz-Neumann (2014) 観察による歩行分析 原著 第1版第14刷 医学書院

まとめ

膝関節の異常運動「屈曲制限」と「過度の屈曲」が歩行に与える影響についてご紹介しました。

膝は、屈曲角度が乏しくても、逆に屈曲しすぎても問題が生じるということがお伝えできたのではないかと思います。

歩行分析の際、膝の異常によって生じる歩行の要素を念頭に置き、視野を広げて分析することが求められます。

膝の疾患を抱える患者さんは非常に多いので、明日からの臨床に活かしていきましょう。

健常歩行における膝関節について歩行の各相における関節と筋肉の動き膝関節の角度と動きにてご紹介していますので、こちらもご参照下さい。

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