「歩行分析で10m歩行テストを実施したい」
「10m歩行テストの正しい測定方法を知りたい」
「10m歩行テストの基準となるカットオフ値を知りたい」
など、10m歩行テストに関する詳細を知りたい方は多いと思います。
臨床で患者さんの歩行分析をする時、歩行がどのくらい良くなったのかを把握し、それを患者さんにフィードバックすることはとても大切です。
そこで今回、歩行がどのくらい良くなったのかを簡単に把握できる歩行分析として、10m歩行テストの測定方法やカットオフ値、臨床現場での活用方法などを解説しますので、参考にしてみてください。
10m歩行テストとは?
10m歩行テストとは、10mの歩行速度や歩数を測定する評価方法です。
リハビリテーションの臨床現場で幅広く患者さんの歩行評価に使用されています。
理学療法の研究でも多く使用されている評価方法であり、治療効果の確認の指標としても用いられることが多い評価です。
例えば、歩行能力や日常生活活動能力の向上との関連が多々報告されています。
また、10m歩行テストは、評価の信頼性(同じ人に同じ評価をして同じ結果が得られるかどうか)においても、再検査法(実際に同じ結果がでるかを検査すること)によって、歩行パターンの再現性が高いことが報告されています。
10m歩行テストでわかること
10m歩行テストを測定することで、10m間における「歩行速度」「歩数」「歩幅」「歩行率」などの歩行パターンがわかります。
また、初期評価時(治療開始時など)と最終評価時(治療終了時など)にそれぞれ測定をすることにより、歩行がどのくらい良くなったか、何が良くなったかを客観的な数値として把握することができ、それを患者さん自身にフィードバックすることができます。
10m歩行テストのカットオフ値について
10m歩行のカットオフ値は、大人数を対象とした研究結果として様々な報告があります。
ただし、対象者の違いによってカットオフ値には違いがあるため、あくまでも基準として捉える必要があります。
普通のペース(快適なペース)で歩行した場合のカットオフ値として、下記の報告があります。
・回復期における歩行自立度のカットオフ値:11.6 秒
・地域在住高齢者:屋内歩行自立20 秒(0.5m/s) 屋外歩行自立10 秒(1m/s)
10m歩行テストの測定準備
10m歩行テストの測定方法についてご説明します。
測定方法が違うと、正しい値が計測できないため、正確な測定方法で実施することが大切です。
事前に測定環境を整える
正確な測定をするために、事前に測定環境を整える必要があります。
・16m以上の直線距離と、成人が歩行可能な横幅を確保できるスペース
測定環境は、床面に 10 m 間隔でテープを貼り、 さらにそのテープから前後 3 m の箇所にそれぞれテープを貼り、計 16 m とします。つまり、予備路として前後3mを設定するということです。
・なるべく静かで邪魔の入らない環境
歩行の測定は、正確に歩行分析するために、なるべく横断者等の邪魔が入らないようにする必要があります。
用意するもの
用意するものは以下の通りです。
・テープなど床に印のできるもの
・メジャー
・ストップウォッチ
・ビデオカメラ(必要に応じて)
・AYUMI EYE / AYUMI EYE medical(必要に応じて)
10m歩行テストの測定スタート
測定開始
測定開始前、被験者は予備路のスタート地点にて静止立位で待機します。
測定は2回(通常歩行と最速歩行)を測定します。
教示内容として、通常歩行は「いつも歩いている速さで歩いてください」、最速歩行は「できるだけ速く歩いて下さい」に統一します。
教示内容は、別の言い回しでも可能ですが、初期評価時と最終評価時で同じにしましょう。
測定できる状況が整ったら、実際に歩行をしてもらいます。
歩行速度の所要時間は、ストップウォッチを用いて測定します。
先行足が10 m の開始線を踏むか越えた時点で計測を開始し、先行足が10 mの線を踏むか越えた時点で終了とします。
ビデオカメラで撮影をすることで、歩数、歩幅、歩行率を算出することができます。
測定中は会話をしないように統一することも必要です。
10m歩行テスト時の注意点
テスト時は「転倒」に注意
10m歩行テスト時、まずは「転倒」に注意することが必要です。
10m歩行テスト時以外でも頻繁に見られることですが、「テスト」と名の付く評価を行う時、患者さんは頑張りがちな傾向があります。
「成果を出さないと、頑張らないと」と張り切ったり、緊張もあって普段の歩行とは少し違った感じになってしまうことは、研究によっても報告されています。
よって、リスク管理を徹底することは大切だと言えます。
テストの誤差には測定環境・方法が関係している場合もある
測定環境と測定方法の違いによって、タイムに誤差があることも報告されています。
測定環境の違いは、床面の違いや雑音、温度や湿度時間帯など違いのことを示します。
測定方法の違いは、教示方法、ストップウォッチを押すタイミングなどの違いを示します。
これらの違いによって、差が出る場合があります。
そのため、測定環境や測定方法をなるべく同じにして評価する必要があります。
AYUMI EYEでより詳細なデータを計測!
ストップウォッチで計測する10m歩行テストについてご紹介してきましたが、AYUMI EYEという機械を用いることで、「歩行速度」「歩数」「歩幅」「歩行率」以外にも多くのパラメータを得ることができます。
AYUMI EYEは、3軸加速度センサーモジュールとiPad(iPhone)専用アプリを用いて、歩行時の加速データに基づき歩行機能を「推進力」「バランス」「リズム」の3点から分析するデバイスです。
AYUMI EYEで歩行分析をすると、「リハビリ訓練の効果をわかりやすく説明したい」「歩行分析は観察項目が多すぎて評価がしずらいので、効率的に測定したい」「運動習慣を身に着けてほしい」などの課題を解決してくれます。
AYUMI EYEによる客観的で定量的な歩行分析は、転倒予防や健康寿命の延伸だけでなく、患者さんとのコミュニケーションを円滑にし、歩行へのモチベーション向上に寄与します。
AYUMI EYEは、どこでも簡単に測定することができ、アプリで結果を見ることができるので、とても便利なのが特徴です。
まとめ
10m歩行テストの詳細な測定方法やカットオフ値、臨床での活用などをご紹介しました。
歩行分析において、10m歩行テストは一般的に幅広く利用されている評価なので、正しい測定方法をきちんと理解しておくことが大切です。
また、AYUMI EYEを用いることで、10m歩行テストで得た結果だけでなく、さらに詳細な歩行能力を明示できるので、歩行の専門家として是非参考にして頂ければと思います。
【参考文献】
1)飯田修平.10 m 歩行テストの信頼性[第一報] ─ 最速歩行と通常歩行の計測順序の違いによる影響─.理学療法学32(1):81-84,2017
2)杉原敏道.10m歩行所要時間測定の検者内信頼性について.専門リハビリ第3巻13-15頁.200