歩行動作に関わる「腸腰筋」の重要性とは?

みなさまは「腸腰筋(ちょうようきん)」という筋肉をご存じでしょうか。

どこにある筋肉組織なのか、どのような役割があるのか、歩行動作とどのように関係するのかなど、なかなかイメージしにくいと思います。

実はこの「腸腰筋」、歩行分析やリハビリテーションに深く関わりがあるのです。

今回の記事では、この「腸腰筋」の大事な役割と、歩行メカニズムとの密接な関係性などをお伝えしたいと思います。

腸腰筋とは?

「腸腰筋」とは大腰筋小腰筋腸骨筋、この3つの筋肉組織の総称をいいます。

腰から太ももの付け根にかけて左右対称に付着しており、「深腹筋(しんふっきん)」とも呼ばれるインナーマッスルになります。

我々の身体の上半身と下半身を繋ぐ大切な筋肉組織体になります。

腸腰筋の役割とは?

我々の身体の上半身と下半身を繋ぐことはもちろんのこと、普段の日常生活においても、大腿部を持ち上げる筋肉とされています。

直立時は伸びている状態ですが、着座時は縮こまってしまい、これが長時間続くと固くなり、腰痛の要因の1つと言われております。

また男性は35歳~44歳前後、女性は45歳~54歳前後から、だんだんと筋力が低下し衰え始める傾向があります。

そのため、健康的な身体を保つためには、腸腰筋を鍛えるトレーニングが大変重要になります。

大腰筋、小腰筋、腸骨筋についても、それぞれの役割をご紹介します。

大腰筋(だいようきん)

股関節(骨盤と大腿骨)を安定させ、歩く際に脚を持ち上げる筋肉です。

大腿骨を前方に向けて動かすことを「股関節屈曲(こかんせつくっきょく)」といいます。

小腰筋(しょうようきん)

大腰筋からの分束になる筋肉組織で、一部の学説によっては、退化しほぼ機能していないといわれております。

大腰筋の中に埋もれておりますが、大腰筋の補助する役割があります。

腸骨筋(ちょうこつきん)

大腰筋と異なり、背骨(脊椎)に付着していない筋肉になります。こちらの筋肉も、脚を持ち上げる「股関節屈曲」の働きをします。

腸腰筋の中で最も深層部にある組織でもあります。

我々が歩く際は、股関節外側に捻る動き(外旋といいます)や、下肢を振り出す動きをする際に使用する筋肉といわれてます。

腸腰筋と歩行動作の関係性

腸腰筋は鍛えることによって、床に足が引っ掛かりにくくなり、転倒してしまうことが防げるといわれております。

これには理由がいくつかありますが、主に上げられるのは「円背(猫背)」が関係しているとの説があります。

ヒトの身体が理想とする基本的な直立姿勢は、上記イラストのような緩やかなS字を描きます。この姿勢がもっとも効率的に身体に掛かる各負担を分散し、支えることが出来る姿勢です。

しかし、加齢などに伴い円背になってしまうと、上半身が前方に傾いていることで、直立姿勢時は背中が丸まってしまいます。

この状態では、腸腰筋が働きにくくなり筋力も低下し、持ち上がった足の位置が低くなることになります。

その結果、足が床に引っ掛かってしまう「つまづき」や「転倒」に繋がる可能性があるわけです。

また、猫背になることで、実年齢よりも老けて見られることにも繋がり、身体全身の血流も悪くなり、肩こりや腰痛、慢性便秘の一因にもなります。

さらに腸腰筋が弱くなってしまうと、背骨がまっすぐになってしまうことから、椎間板の負担を増大させてしまう可能性も当然上がってしまう恐れもあります。

腸腰筋を鍛えて綺麗な正しい姿勢に

衰えると日々の日常生活にも支障を引き起こす腸腰筋ですが、実はトレーニングやストレッチなどで鍛えることが出来るのです。

また固くなってしまった筋肉組織を柔軟にすることで、以下のようなさまざまなメリットがあります。

  ・身体のバランスを保つ
  ・正しい姿勢が維持できる
  ・ヒップアップや、下っ腹が出てしまうのを防ぐ
  ・肩こりや腰痛、便秘、血行不良の緩和
  ・足や膝を持ち上げる筋力の強化

見た目の綺麗さだけではなく、普段の日常生活においても、疲れにくい若々しい身体を保つことが出来るといえます。

腸腰筋を鍛えるトレーニング

ご自宅等で簡単に実践できるトレーニングを2種類ご紹介したいと思います。

レッグレイズ

  1.仰向けになります。
  2.膝を伸ばしたまま、両足を上下させます。
  3.これを、10~20回ほどを1セットとして、3セット前後を目安に行います。

足を下ろしたときに、床に足をつけないで維持し続けると効果的です。さらに足を下ろす際は、ゆっくり行うことで効果が上がります。

バイシクルクランチ

  1.仰向けになります。
  2.足を浮かせて、自転車を漕ぐような動きを行います。
  3.これを、10回を1セットとして、3セット前後を目安に行います。

動作をゆっくり行うと効果的です。さらに両手を頭の後ろで組むとさらに効果が上がります。

 

上記トレーニングが難しい方は、次の方法でも、ある程度の効果が見込まれますので是非お試しください。

普段から階段を使う

エスカレーターやエレベーターは我々の生活において、とても便利で簡単に移動できる楽なものですが、1階から2階へ、4階から3階へ等、ちょっとした運動が腸腰筋を刺激するといわれてます。

慣れてきた方は、一段飛ばしで少し前のめり気味に意識しながら行うとより効果的です。

少し大股で歩くことを意識

いつもの歩幅に、足裏1つ分くらいを加えて、少し大股になることを意識して歩くことで効果が見込まれます。

あからさまな大股歩きは、周りの目や他の歩行者の邪魔になる場合があるので注意しましょう。

坂道で軽く走る

こちらも少し前のめりの姿勢を取り、上り坂や下り坂を走ることで腸腰筋を刺激します。

全力で走るのではなく、軽いジョギングでも効果が見込まれます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。 腸腰筋が我々の身体において、とても大切な筋肉であることが伝わったと思います。

腸腰筋は加齢や凝り固まることで筋力低下してしまうものの、日々のトレーニングやストレッチなどを反復的に行うことで、再び鍛え直すことが出来ます。

男女年齢を問わず、健康維持や歩行筋力維持、正しい姿勢の維持など、早期からの取り組みで転倒防止や歩行改善を目指していけたらと思います。

 

※ヒト腸腰筋 (大腰筋, 腸骨筋) の筋線維構成について 長谷川真紀子 氏
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsma1939/47/6/47_6_833/_pdf/

※高齢者にみられる腸腰筋体積の性差 長谷川 伸 氏 , 岡田 純一 氏 , 加藤 清忠 氏
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspfsm/57/1/57_1_131/_pdf/


歩行解析デバイスAYUMI EYEで歩行分析

AYUMI EYEはご利用者様の腰に専用ベルトを用いて装着し、10m歩くだけで評価を行うことが可能です。

バランスや歩行速度などがその場でiPad専用アプリにて解析され、結果が点数・マップ化してすぐに見ることができます。

測定者の評価の効率が上がるとともに、ご利用者様にもその場で結果を共有できるため、歩行の改善や歩行補助具の選定があっているのか、互いに確認することができます。

簡便な操作で分かりやすい結果をフィードバックできるAYUMI EYEを使用し、歩行分析を行ってみてはいかがでしょうか。

お問い合わせ

03-5447-5470 受付時間:平日 9:00~18:00

CONTACT

お問い合わせ

資料請求や、AYUMI EYEのご利用に関しての
お問い合わせはこちらからお願いします。
無償デモ機の貸し出しも受付しております。
お気軽にお問い合わせください。

歩行推進力とその改善方法
AYUMI EYE PREMIUM COLUMN第2弾
歩行時のバランスの重要性と改善方法 著者:佐藤洋平(EHA監修)
今すぐ会員登録して見る