歩行モデルの理想形とは?評価指標と運動学的分析から考える!

いつまでも健康的に歩き続けるためには、理想的な正しい歩行モデルを習得することは重要です。

今回こちらの記事では、正しい歩行モデルを実現するために必要な指標などについて詳しくご説明します。

この記事で、今までの研究結果や評価指標の目安を参考にしながら、正しい歩行モデルを身につけていきましょう。

歩行モデルに必要な「歩容」の評価

一般的に、理想的な歩行モデルの形を考えたときに思いつくのが、美しいフォームで歩くことでしょう。 

しかし、生涯を通じて理想的な歩行モデルを考えたときには、美しいフォーム以外にも大切な要因があります。

それは「安定した歩行」「エネルギー効率のよい歩行」の習得です。 

それらの習得には、歩行時の重力に対して立位姿勢を保持しながら全身を移動させる複雑な動作の仕組みを理解する必要があります。 

また、複雑な歩行動作のなかでも歩行時の姿勢や動作の運動形態である「歩容」の評価指標を知ることは、正しい歩行モデルの習得に役立ちます。

「歩容」の主な評価指数

次に、正しい歩行モデル習得のポイントになる「歩容」についてご説明します。 

主に、歩容のなかでも下記のような評価指標は、正しい歩行モデルの習得に役立ちます。

  • ・歩行速度
  • ・歩幅
  • ・足部の角度

それぞれの内容や目安になる数値について、詳しく見ていきましょう。

歩行速度

歩行速度は、速い人ほど健康寿命が長い傾向にあるとも言われているほど有意義な歩容要素の一つになります。

歩行速度は「歩幅」と単位時間当たりの歩数によって決定されています。

なお、一人ひとりの自由歩行時の歩行速度は異なりますが、社会参加においての歩行速度の目安としては、秒速1.0m以上です。

その理由は、歩行者信号の「青」の時間が秒速1.0になるため、それ以下になると横断歩道を渡りきれなくなるからです。

また、多くの人が快適とされている歩行速度のモデルは、秒速1.3m(時速約4.7km)ほどと言われています。

【参考】:日本経済新聞 歩く速さは健康長寿のサイン、上手に歩く秘訣とは

【参考】:フラコラ公式サイト  足の総合病院の先生が解説!「健康寿命」が伸びる歩行速度と健康状態セルフチェック法!

歩幅

歩幅は、健康的な歩行を目指す上で重要な要素です。

実際に、歩幅の狭い人は広い人に比べて認知機能が3.39倍低下しやすいという研究結果もでています。

歩幅とは、片側の足が接地して、次に対側の脚が接地するまでの動作を言います。

なお、正しい歩行モデルになる歩幅の目安は「身長 - 100cm」と言われています。

例えば、身長160cmの人であれば、60cmが歩幅の目安です。

【参考】:CBC web 健康カプセル!ゲンキの時間第307回(2018.5.20) 歩く

【参考】:AERA dot. 歩くなら、今の歩幅にプラス5センチ! 脳を活性する大股歩きの“エビデンス”

足部の角度

足部の角度は、歩行バランスを安定させるために重要な要素です。

なお、足部の角度(足角)とは、歩行中の進行方向に対する踏み出したときの足の角度を言います。

理想の足角は、7°〜13°の外旋が正常とされており、足角が広がりすぎてしまうと歩行バランスが崩れるばかりか、筋力低下につながります。

【参考】:J-STAGE 歩行時足角と下肢捻転角の関係

運動学的分析で考える正しい歩行モデル

運動学的分析は、正しい歩行モデルを評価する上で歩行分析によく使われています。

運動学的な指標内容としては、主に以下のようなものが参考になります。

  • ・下腿の関節角度
  • ・体幹の役割
  • ・腕の運動
  • ・床反力
  • ・関節モーメント

それぞれの内容を確認しながら、正しい歩行モデルを手に入れていきましょう。

下肢の関節角度

身体の各関節は、歩行周期の各相でそれぞれ伸展・屈曲、外転・内転の運動を行っています。

また、歩行は主に股関節・膝関節・足関節の下肢運動によって行われるため、下肢関節角度の正常可動域を知ることは、正しい歩行モデルの習得にとって重要な指標になります。

次に、下記の表で、歩行の際の股関節・膝関節・足関節の下肢運動の正常可動域とされている角度を確認していきましょう。

なお、股関節は体幹が直立であれば、ほぼ解剖学的股関節角度と同じになりますが、体幹が屈曲か伸展している場合は異なります。

また、表にある足関節の角度は、下腿と足部のなす角が90°の時に底背屈0°と定義した際の角度です。

【参考】:Movement analysis for rehabilitation 歩行分析(関節運動) 歩行周期の各時期で、関節はどう動いているのか?

体幹の役割

歩行中の体幹は、骨盤との協調性や肩・腕の動きと大きな関連性があります。

自由歩行では各体節はその長軸に対して回旋運動を行っており、その中軸にある体幹の回旋運動は安定した歩行のためにも重要です。

体幹の回旋は肩の回転を生じさせて、肩の回旋方向は骨盤の回旋と反対の向きに起こります。

また、大腿骨や脛骨も長軸に関して回旋しており、安定して歩行を実現しています。

なお、歩行中における体幹の運動範囲としての回旋角度は、水平面で約5°です。

「体幹の役割」については、こちらのコラムにも詳しく載せております、併せてご参照ください。

【歩行分析】体幹の働き、運動の範囲、筋運動、歩行分析のポイント

腕の運動

歩行時に無意識に行っている腕の振りには特徴があり、他の体節とは逆の動きをしています。

また、腕の振りの程度は歩行速度にも強く影響しており、腕を60°以上振って歩くと重心の過度な動揺が抑制されると言われています。

そのため、正しい歩行モデルの習得には腕をしっかり振ることがポイントです。

「腕の運動」については、こちらのコラムにも詳しく載せております、併せてご参照ください。

人はなぜ、歩行時に腕を振るのか?重心位置・エネルギー効率について

床反力

床反力とは、立脚相で足底が地面を圧する力と同等の力が地面から反力として作用することを言います。

歩行の際、歩き始めには床反力はまず振り出す側の足に移動します。

その後、支持する側の足に働くことで、片脚となって足を振り出すことが可能です。

そのため、床反力を評価することは、歩行時の推進力を上げるためにも重要な指標になると言えるでしょう。

「床反力」については、こちらのコラムにも詳しく載せております、併せてご参照ください。

歩行と床反力の関係

関節モーメント

関節モーメントは、歩行の際の関節と筋肉の動きを観察するためにも重要です。

また、関節モーメントは、外部関節モーメント内部関節モーメントの2種類あります。

外部関節モーメントは、外部からの力によって関節を回転させることを言い、内部関節モーメントは、抗重力作用を持つ筋によって関節を回転させることを言います。

なお、歩行時の関節モーメントを評価する際は「床反力はどこを通っているのか?」「働いているのはどの筋肉なのか?」を観察していくことがポイントです。

【参考】:理学療法士の働き方改革ch 〜転職・独立開業・治療技術など〜 【関節モーメント】多くの理学療法士が躓くので、超簡単に解説します

【参考】:動作分析と治療マネジメント 歩行時の骨盤・股関節 【歩行・動作分析の考え方のポイント! 『関節モーメントとは?』】

【参考】:動作分析と治療マネジメント 膝関節のアライメント 【床反力による関節モーメントの考え方】

【参考】:リハビリクエスト 【世界一わかりやすい】理学療法士が考えるべきモーメント

まとめ

今回は「歩行モデルの理想形とは?評価指標と運動学的分析から考える!」についてご説明しました。

本日お伝えしました理想的な歩行モデルの各項目の数値は、年齢体力疾患環境などでも変化していきます。

そのため、そのときの状況や一人ひとりの状態を観察していきながら、歩行訓練を続けていくことが必要です。

そこで、最後に日々の歩行訓練の精度を上げることができるデバイスである「AYUMI EYE」をご紹介します。

AYUMI EYEは、歩行に必要な要素である「バランス」「リズム」「推進力」を正確に測定・評価することができます。

現在、医療機関や高齢者施設など、リハビリ評価や歩行能力向上のために、数多くの分野で活用されています。

ぜひ、歩行訓練の評価・分析の精度を上げていきながら、歩行能力向上を目指していきましょう。

(参考資料)
日本経済新聞 歩く速さは健康長寿のサイン、上手に歩く秘訣とは
フラコラ公式サイト  足の総合病院の先生が解説!「健康寿命」が伸びる歩行速度と健康状態セルフチェック法!
CBC web 健康カプセル!ゲンキの時間第307回(2018.5.20) 歩く
AERA dot. 歩くなら、今の歩幅にプラス5センチ! 脳を活性する大股歩きの“エビデンス”
J-STAGE 歩行時足角と下肢捻転角の関係
Movement analysis for rehabilitation 歩行分析(関節運動) 歩行周期の各時期で、関節はどう動いているのか?
動作分析と治療マネジメント 歩行時の骨盤・股関節 【歩行・動作分析の考え方のポイント! 『関節モーメントとは?』】
動作分析と治療マネジメント 膝関節のアライメント 【床反力による関節モーメントの考え方】
リハビリクエスト 【世界一わかりやすい】理学療法士が考えるべきモーメント


歩行解析デバイスAYUMI EYEで歩行分析

AYUMI EYEはご利用者様の腰に専用ベルトを用いて装着し、10m歩くだけで評価を行うことが可能です。

バランスや歩行速度などがその場でiPad専用アプリにて解析され、結果が点数・マップ化してすぐに見ることができます。

測定者の評価の効率が上がるとともに、ご利用者様にもその場で結果を共有できるため、歩行の改善や歩行補助具の選定があっているのか、互いに確認することができます。

簡便な操作で分かりやすい結果をフィードバックできるAYUMI EYEを使用し、歩行分析を行ってみてはいかがでしょうか。

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歩行推進力とその改善方法 著者:佐藤洋平(EHA監修)
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