すべての物体には重量があり、その中心を“重心”といいます。
もちろん私たちの身体にも重心があり、重心の位置はさまざまな動作を行うことで常に変化します。
私たちの身体は、無意識のうちに均衡を保とうとするのですが、この変化に対応が出来ない、もしくは対応が遅れたりすると、均衡が保てなくなり、転倒に至るといわれております。
今回はこの「バランス」と、転倒防止に向けた「バランス訓練」についてご紹介します。
「重心」と「支持点」の関係や「支持基底面」とは
重心とは別に、均衡を保つ「支持点」というのが存在します。
物体を動くと重心も自ずとズレてしまいますが、均衡を保つことが出来る支持点も当然ズレます。重心と支持点の距離が遠くなれば遠くなるほど不安定となり、バランス維持が難しくなってきます。また、支持点ではより大きな力を必要とします。
これは私たちの身体にも置き換えることができます。
重心の位置はあらゆる動作を行うことで移動しますが、身体を支えている支持点も当然必要になります。
重心と支持線で囲まれる範囲を「支持基底面(しじきていめん)」といいます。
重心がこの支持基底面の範囲から外れると、バランスを保つことが出来なくなり転倒してしまいます。これが「バランスが悪い」ことによる転倒の原因となります。
何かしらの動作を安定して行うためには、バランスを保つための姿勢の補正や修正を常に行う必要があるといえます。
「静的バランス」「動的バランス」とは
私たちの身体におけるバランス能力は、大きく分けて「静的バランス」と「動的バランス」の2つに分類されます。
静的バランス
身体が静止状態のときに、均衡を保ち続けるための能力のことです。
身体が転倒しないぐらいでの姿勢時に、均衡を維持するための筋力や骨の支持力が、静的バランス能力には必要として挙げられます。
動的バランス
身体が動きを伴いながらも、転倒しない状態を保ち続ける能力のことです。
さまざま動きが伴うことにより、重心や支持点は常に変化します。そのため人体にはこの動的バランスが必要とされております。
よく「バランスがよい」という言葉を耳にするかと思いますが、この静的バランス、動的バランスが常に保たれている状態のことをいいます。
バランス能力を高めるためには
崩れてしまったバランス能力も、トレーニングによる訓練を行えば、能力の回復や改善、転倒リスクの緩和などができます。
よくリハビリテーションなどで行われる、バランス感覚(姿勢制御)を構成する内容として、以下の9つが当てはまるといわれております。
私たちの身体はこの9つが複雑に絡み合い、組み合わさることによってバランスを保つことが必要となります。
安定性限界:
支持基底面内にて、重心を前後・左右、可能な限り動かすことができる
運動システム:
筋肉量や各関節部の可動性や協調ができている
静的安定性:
立位が変化したとしても、安定して支持基底面の範囲内に重心を維持させることができる
垂直性:
地面や床面が傾いていたとしても、重力方向へ姿勢を適切に修正することができる
反応的姿勢制御:
外力に対して、支持基底面の範囲内に重心を維持し、安定性を保つことができる
予測的姿勢制御:
随意運動(自らの意思によって動かす運動)に先行して、重心を移動させることができる
動的安定性:
常に変化する支持基底面に、重心をコントロールすることができる
感覚統合:
さまざまな環境に合わせて、感覚情報(視覚や体性感覚、前庭覚など)を察知、検知することができる
認知的影響:
認知が付加しても、姿勢の安定性を維持することができる
スポーツなどの運動学においては、これら9つのバランス感覚は、以下の運動神経に含まれるとされてます。併せてご紹介いたします。
バランス能力(バランス感覚):
上記9つにいずれも対応することができる
リズム能力:
目や耳からの情報を、リズミカルな動きで表現することができる
連結能力:
各関節や筋肉の動きを、タイミングよくかつ効率的に使い、無駄のない動きをすることができる
(※力加減や強弱、スピード調整などがこれに当たります)
反応能力:
視覚や聴覚、触覚からの合図に、素早くかつ正確に対応をすることができる
定位能力:
物体と物体の距離感を把握することができる
(※「空間把握」ともいわれます)
変換能力:
素早い切り替えや、予測しながらの先取りを行うことができる
識別能力:
手や足などを使い、道具などの物体を操作することができる
まとめ
いかがでしょうか。
一口に「バランス」といっても、実はさまざまな能力や感覚が無意識のうちに複雑に絡みって私たちの身体を支えております。
AYUMI EYEは、こういった歩行バランスの能力分析や解析に長けており、多くのリハビリテーション病院や医療施設、理学療法士さまでご利用いただいております。
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