方向転換動作における筋肉のはたらき

皆さんはどのように方向転換が行われるかご存知でしょうか。

歩行は移動のために日常生活で最もよく用いられるもので、進む方向を変える場合には必ず方向転換をしなければなりません。

方向転換は障害物をよけたり、誰かを追ったりする際に何気なくしている動作ですが、身体のスピードをうまくコントロールする必要がある動作です。

そのため、バランス能力が低下した高齢者では転倒のリスクとなり(※1)、スポーツ現場では急激な方向転換はケガの原因と報告されています。(※2)

今回は方向転換動作がどのように行われるか、特に筋肉の働きについて解説していきます。

方向転換動作とは

皆さんが考える以上に私たちは方向転換動作を行っており、日常生活における歩行中おおよそ半分の歩数が方向転換動作に用いられていたという報告があります。(※3)

方向転換動作には大きく分けて2つの種類があります。支持する側の足と同じ方向へ方向転換するクロスオーバーステップ(スピンターン)と反対方向へ方向転換するサイドステップ(ステップターン)です。

クロスオーバーステップでは支持する側の股関節は内転・内旋しながら伸展し、骨盤は同側へ回旋します。

また支持する足の下腿が前下方に傾斜し、足関節の背屈と足の外がえしが生じます。

そして踏み切りの際には、足関節の底屈と内がえしが生じます。

一方でサイドステップでは支持する側の股関節は外転・外旋しながら伸展し、骨盤が反対側へ回旋します。

また支持する足の下腿が前内方へ傾斜し、足関節の背屈と足の内がえしが生じます。

そして踏み切りの際には、足関節の底屈と外がえしが生じます。(※4)高齢者においてクロスオーバーステップを用いやすいと報告されています。(※5)

この動作が多くなると身体重心が支持基底面より逸脱しやすく、ふらつきや転倒の原因となります。

方向転換動作の筋活動とは

続いて、方向転換動作ではどのような筋が活動して、各動作を担っているのかについて解説したいと思います。

方向転換動作中の筋活動について表面筋電図を用いて分析した研究によると、股関節および骨盤をうまくコントロールするために股関節外転筋が活動し、さらにスピードを減速するために足関節底屈筋が活動することが報告されています。(※6)

クロスオーバーステップとサイドステップ、どちらの方向転換動作様式であっても、支持する側の足に体重が加わり始めた際に、膝を伸ばす作用のある外側広筋と膝を曲げる作用のある大腿二頭筋、股関節外転筋である中殿筋の活動が大きくなります。

続いて蹴り出しにかけてふくらはぎを形成するヒラメ筋の活動が大きくなります。

そして方向転換動作の最中、背筋を構成する脊柱起立筋の筋活動が大きくなると報告されています。

こういった筋活動の特徴は歩行の停止動作時と類似しています。(※6)

これらの報告より、大腿二頭筋やヒラメ筋、脊柱起立筋など、身体が前進するのに対してブレーキとして働くような身体の後ろ側に存在する筋の活動が、歩行中における方向転換では大きくなります。

まとめ

日常生活で実は頻回に行う方向転換動作について、その動作がどのように行われるのか筋の活動を中心に解説しました。

身体をうまく減速させながら向きを変えることが重要で、身体の後面に位置する筋の活動をうまく引き出すことが転倒やケガ予防に重要であることがわかります。

歩行リハビリではいかに転倒せずに安定した歩行動作が獲得できるかが鍵になります。

そのためには歩行時、特に方向転換時にどのようなバランスで動いているのかを知ることが重要です。

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(※1)Yamada et al. Maladaptive turning and gaze behavior induces impaired stepping on multiple footfall targets during gait in older individuals who are at high risk of falling. Arch Gerontol Geriatr. 2012
(※2)Boden BP et al. Mechanisms of anterior cruciate ligament injury. Orthopedics. 2000
(※3)Glaister et al. Video task analysis of turning during activities of daily living. Gait Posture. 2007
(※4)伊藤ら.歩行時の方向転換動作.関西理学.2015
(※5)山﨑ら.歩行中における方向転換動作のバイオメカニクスに関する文献レビュー.関西理学.2019
(※6)Hase et al. Turning strategies during human walking. J Neurophysiol. 1999


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