歩行時にクローヌスが起きている患者さんに対して、どのようなリハビリをすべきか悩む方はいるのではないでしょうか。
クローヌスとはおもに脳卒中によって引き起こされ、少しの伸長刺激でも関節がガクガクしてしまう現象です。
クローヌスを改善するには、ストレッチや電気刺激などのアプローチを行うことが大切です。
この記事では、クローヌスの概要や具体的なリハビリ内容についてご紹介します。
クローヌスの仕組みや対処法を把握しておけば、患者さんに適切なリハビリを提供できるでしょう。
クローヌスとは
クローヌスとはどのような状態なのでしょうか。
ここではクローヌスの症状について詳しく解説します。
関節がガクガクと動いてしまう症状
クローヌスとは、筋肉のわずかな伸長刺激に対してガクガクと関節が動いてしまう現象のことです。
クローヌスは上位運動ニューロンの障害(錐体路障害)、つまり脳卒中や脊髄損傷などの中枢神経疾患によって引き起こされます。
中枢神経が障害され、伸長刺激に対して筋肉が過剰に反応してしまうことがおもな原因です。
クローヌスは膝関節や足関節に起こるケースが多く、以下の評価によって判断が可能です。
【膝関節のクローヌスの評価】
- 1.膝を伸展位にする
- 2.膝蓋骨を持って素早く下方に押し下げる
- 3.このとき膝蓋骨が上下に動けば陽性
【足関節のクローヌスの評価】
- 1.膝を軽度屈曲位にする
- 2.足関節を素早く背屈させる
- 3.このとき足関節が上下に動けば陽性
クローヌスと関連のある現象
クローヌスと関連性のある現象には「痙縮」や「腱反射亢進」などがあります。
(詳しくはコチラをご参照ください)
痙縮とは自分の意思とは関係なく筋緊張が高まり、関節が固くなることです。
腱反射亢進とはその名前の通り、腱の伸長に対する反応が過剰となり、必要以上に筋肉が収縮することを指します。
どちらもクローヌスと同様に、筋肉の伸長反射が病的に亢進しているのが原因で、錐体路障害によって引き起こされます。
クローヌスが現れることによる歩行の影響
クローヌスが現れると、歩行にどのような影響が出てくるのでしょうか。
ここではその影響について詳しく解説します。
麻痺側下肢の支持性低下につながる
クローヌスが現れると、麻痺足下肢の支持性低下につながります。
歩行中は下腿三頭筋への伸長刺激が入りやすく、クローヌスによってガクガクと足関節が動くため支持性が低下します。
また、麻痺側下肢は筋力も低下しているケースが多いので、さらに歩行時の不安定性が高まるでしょう。
クローヌスと運動麻痺によって歩行能力が低下すると、短距離でも疲れたり、転倒しやすくなったりしてしまいます。
クローヌスを放置すると尖足位をともなうことも
クローヌスが出現する状態が続くと下腿三頭筋の筋緊張が高くなり、やがて尖足位をともなうこともあるでしょう。
尖足位によって足関節の背屈可動域制限が起こると、さらに歩行に支障が出る恐れがあります。
たとえば、足関節の背屈が困難となるのでつまずきやすくなったり、歩行スピードが遅くなったりします。
また歩行だけでなく、他のADL動作にも支障が現れるでしょう。
このように、歩行能力を高めるためにはクローヌスを発生させないように工夫をする必要があります。
クローヌスに対してのアプローチ方法
クローヌスを改善させるためには、どのような方法がおすすめなのでしょうか。
ここでは具体的なアプローチ方法についてご紹介します。
クローヌスを起こす筋肉のストレッチ
クローヌスを引き起こす筋肉の継続的なストレッチは、筋緊張の抑制につながります。
脳卒中治療ガイドラインでは、片麻痺患者に対するストレッチ、関節可動域訓練の実施が推奨されています。
筋肉を効率的にストレッチをするには、徒手的あるいは装具を使用して持続的に伸長させる方法が望ましいです。
ストレッチは比較的実施しやすいアプローチでもあり、筋肉の部位によっては自身だけでも行えるでしょう。
尖足の予防にもつながるので、筋緊張が高いと感じたらストレッチをするのも1つの手段です。
電気刺激の実施
経皮的電気刺激(以下:TENS)の活用によって、クローヌスや痙縮の改善が期待できます。
TENSとは知覚神経に対して電流を流し、疼痛の軽減や筋緊張の緩和を図る治療法です。
対象筋の拮抗筋の収縮をTENSで促すことで、クローヌスの改善が認められるといわれています。
脳卒中治療ガイドラインでは、高頻度のTENSの実施が推奨されており、歩行能力も改善したという報告もあります。
このように、クローヌスだけでなく歩行能力の改善も期待できる電気刺激は、効果的なリハビリ手段といえるでしょう。
電気刺激を使用できる環境がある医療機関では、ぜひ活用してみてください。
ボツリヌス療法
ボツリヌス注射を用いた治療も、クローヌスや痙縮に有効です。
ボツリヌス療法とは、神経筋の伝達を阻害する毒素を対象筋に注射して筋緊張を低下させる治療法です。
脳卒中治療ガイドラインでもボツリヌス療法は強く推奨されており、実際に筋緊張やクローヌスが改善されたという報告もあります。
(詳しくはコチラをご参照ください)
ただし、医療機関によってはボツリヌス療法を取り扱っていなかったり、準備に時間がかかったりする点には注意しましょう。
まとめ
クローヌスは歩行だけでなく、その他のADL動作にも支障をきたす恐れがあります。
クローヌスを改善するには、ストレッチや電気刺激によって亢進している筋緊張を抑制することが重要です。
機能的なリハビリを行うとともに、クローヌスに対してのアプローチも忘れずに行いましょう。
歩行分析システムの「AYUMI EYE」を使用すれば、クローヌスが歩行時にどのような影響を与えているのかを把握できます。
AYUMI EYEは、歩行機能を「推進力」「バランス」「歩行リズム」の3つに分けて分析するデバイスです。
そのため、クローヌスの影響による立脚期の動揺性や歩行速度、歩行周期の乱れなどを客観的に分析可能です。
さらに、運動療法や装具療法などのリハビリを実施した後の効果判定にも利用できるでしょう。
ぜひAYUMI EYEを活用して、クローヌスに対するリハビリの役に立ててみましょう。
(参考資料)
・近畿大学 – 痙縮・難治性疼痛|対象疾患|医療関係者へ
・日本脳卒中学会 – 痙縮に対するリハビリテーション
・藤田和樹ら – 脳卒中片麻痺者に対する下肢ボツリヌス療法が歩行時の筋活動および歩行の時間・距離因子に及ぼす影響
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