私たちは、歩行の際に相当な荷重が足にかかっています。
その足にかかる荷重に対して、荷重中心の移動をうまくコントロールすることで、スムーズな歩行を可能にしているのです。
そこで、今回こちらの記事では、私たちの歩行を支える足圧分布の分類や歩行時における足底圧中心の移動について詳しくご説明します。
ぜひ、こちらの記事を参考にしながら、歩行分析や歩行訓練の精度向上にお役立てください。
足圧分布を分析する際におさえておきたいポイント
始めに、足圧分布を分析する際におさえておきたいポイントを下記3点ご紹介します。
- ・足のアーチ
- ・足趾機能
- ・足底圧中心(COP)の軌跡
それぞれ足圧分布の分析に重要なポイントとなるため、詳しく見ていきましょう。
足のアーチ
足のアーチは、内側縦アーチ・外側縦アーチ・前足部横アーチの3種類の構造で成り立ちます。
そのなかでも内側縦アーチは、土ふまずを形成しており、衝撃吸収など歩行の成立に働きます。
なお、歩行バランスを保つためには、常に正しいアーチを保つことが必要です。
しかし、筋肉の緊張や筋力の不均衡などが起こると足のアーチが乱れてしまいます。
足のアーチが乱れてしまうと、足圧分布のバランスも崩れてしまい、足部の痛みや機能低下を引き起こしてしまいます。
【参考】:東海スポーツ傷害研究会 東海スポーツ傷害研究会会誌:Vol.36 スポーツ傷害と歩行時の足圧中心軌跡との関係
足趾機能
主な足趾機能は、歩行の際に地面をつかむことで、特に立位姿勢の保持や歩行時の立脚後期における推進力に大きく関わります。
そのため、足趾機能がうまく機能していないと不安定な歩行になり、歩行時のつまずきや転倒の可能性が高くなります。
そこで、正しい歩行のために有効になるのが、足趾機能の異常運動の観察です。
足趾機能の異常運動が起きている場合は、歩行バランスが崩れている可能性があるため注意が必要です。
なお、主な足趾の異常運動は次の3つが挙げられます。
- ・過伸展
- ・伸展不足
- ・クロートゥ/ハンマートゥ
以上のような足趾機能の異常運動がないかどうかを観察しながら、足圧分布のバランスを保って正しい歩行を目指していきましょう。
※「足趾の異常運動」については、こちらのコラムにも詳しく載せております、併せてご参照ください。
歩行分析における足趾の異常運動3つ、原因と影響について
足底圧中心(COP)の軌跡
歩行時の足圧分布を分析する指標として、その変化を経時的に示すことができるのが、足底圧中心(COP)の軌跡です。
COPはCenter Of Pressureの略で、立脚期で地面に接触した足底に分布する小さな力の集まりをひとまとめにした平均位置のことを言います。
また、床反力作用点、圧力中心とも表現されています。
なお、健常者のCOPの軌跡は、踵部中央から開始。次に足底中央からやや外側を通りながら前方へ移動します。
その後、内側に移動して母指に達するパターンです。
そのため、COPの軌跡が正常なパターンから逸脱している場合は、足にかかる荷重バランスが崩れていることが考えられます。
※「歩行と床反力の関係」については、こちらのコラムにも詳しく載せております、併せてご参照ください。
歩行と床反力の関係
通常のCOP軌跡は、踵から足底外側を経由して前足部へ移行し、母趾へと移動します。
しかし、スポーツ傷害後の歩行時COPについては、健常者のように動くのかどうかが定かではない部分があります。
そこで、スポーツ傷害後の歩行時のCOP 軌跡の研究を参考にしながら、足圧分布のバランスの変化を確認しましょう。
その研究ではスポーツ傷害後の歩行時COP軌跡を解析し、腰部と下肢の傷害部位別で特徴を捉えました。
その結果、腰部や下肢以外のスポーツ傷害においては、歩行時のCOPに及ぼす影響が小さいことがわかりました。
一方、膝疾患の場合はCOPが有意に足底外側に影響を及ぼしていることが判明しています。
そのため、膝部疾患においてはリハビリ開始の早期に、母趾側への荷重を促す指導が有効であることが考えられます。
※「母趾球の役割」については、こちらのコラムにも詳しく載せております、併せてご参照ください。
歩行における母趾球の役割とは
【参考】:上月財団 一線級アスリートの足部形状と足底圧分布から歩行動作の特異性を探る
COP軌跡で足圧分布の多様性を考える
正常歩行と言っても画一的なものではなく、足圧分布も男女など多様性を考える必要があります。
そこで、ある研究では75名の健常成人女性を対象にした足圧分布のCOP軌跡を調べています。
その結果、健常女性の平均的なCOP軌跡は踵接地後の外側への移動、立脚期後半での母趾方向へ向かう内側移動が見られました。
これらは、男性の歩行と比較しても通常歩行におけるCOP軌跡の特徴を示すものと一致しています。
しかし、一方で内外側への偏位群について、特徴的なCOP軌跡も認められています。
特に、内側群のCOP軌跡では、健常者のCOP軌跡に共通とされている外側凸のカーブは見られず、踵接地後ほぼ直線的に母趾方向へ進むものでした。
そのため、今回の結果は健常者の歩行時COP軌跡の多様性を支持するものになります。
また、個々に合わせたさらなる歩行分析の必要性も示唆しています。
【参考】:J-Stage 健常成人女性の歩行分析
まとめ
今回は「足圧分布に影響する要因とは?歩行に重要なCOP軌跡を解説」についてご説明しました。
歩行における足圧分布をバランス良く保つことは、転倒防止やスムーズな歩行につながります。
そのため、足にかかる荷重に対してのバランスや歩行リズム、推進力は詳しく分析していくことが重要です。
そこで、最後に足圧分布のバランス分析や歩行能力向上に貢献するデバイスである「AYUMI EYE」をご紹介します。
AYUMI EYEは、歩行に必要な要素である「バランス」「リズム」「推進力」を正確に測定・評価することができます。
正確な分析と歩行評価が分かりやすく見える化できるのが好評で、現在医療機関や高齢者施設など数多くの分野で活用されています。
ぜひ、歩行分析の精度をアップしていきながら、これからの歩行能力向上に役立てていきましょう。
(参考資料)
東海スポーツ傷害研究会 東海スポーツ傷害研究会会誌:Vol.36 スポーツ傷害と歩行時の足圧中心軌跡との関係
上月財団 一線級アスリートの足部形状と足底圧分布から歩行動作の特異性を探る
J-Stage 健常成人女性の歩行分析
J-Stage 歩・走運動中の動的足圧分布の特徴ー非裸足群と裸足群との比較からー
J-Stage 足圧分布データによる高齢者の足分類と歩行評価への応用
歩行解析デバイスAYUMI EYEで歩行分析
AYUMI EYEはご利用者様の腰に専用ベルトを用いて装着し、10m歩くだけで評価を行うことが可能です。
バランスや歩行速度などがその場でiPad専用アプリにて解析され、結果が点数・マップ化してすぐに見ることができます。
測定者の評価の効率が上がるとともに、ご利用者様にもその場で結果を共有できるため、歩行の改善や歩行補助具の選定があっているのか、互いに確認することができます。
簡便な操作で分かりやすい結果をフィードバックできるAYUMI EYEを使用し、歩行分析を行ってみてはいかがでしょうか。
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