日常生活動作(ADL)とは
日常生活動作(ADL)とはActivities of Daily Livingの略です。
Activitiesは動作、Daily Livingは日常生活を意味します。日常生活動作は基本動作と応用動作に分かれます。基本動作(Base care)とは、歩いたり、立ったり、座ったり、起きたりなどの動作です。応用動作(Self care)とは、更衣・入浴・食事・排泄・整容の動作になります。食事をするにも椅子などに座り続けることで食事を続けられますし、歯磨きなどの整容動作も洗面所に立ち続けられないと出来ないことになります。よって、基本動作とは全ての動作の土台となるもので基本動作なくしては、応用動作は成り立ちません。
「できるADL」 と 「しているADL」
リハビリテーションの世界では理学療法士は基本動作の獲得、作業療法士は応用動作の獲得に向けて、患者様のリハビリプランを考え、行っていきます。その中で大事なのは「できるADL」でなく、「しているADL」なのです。
「できるADL」とは、まさにリハビリテーション室の中で基本動作や応用動作が出来る能力を指します。
「しているADL」とは、自宅や病室などの環境の中で実際に行っている生活動作のことを指します。リハビリテーション室の中で基本動作や応用動作が出来ても、実生活の中で安全に立ったり、歩いたり出来なくては意味がありません。
例えば、学校のテストで成績優秀でも、入学試験では緊張してしまい十分な実力を発揮出来ずに不合格になってしまうのと同じように、実際のリハビリテーション現場でもこういった事例が数多くあります。
ある患者様で脳出血により左片麻痺という、左手から左足まで麻痺で不自由さを感じている方がおられました。この患者様は、最初は車椅子にて移動されていましたが「歩けるようになりたい」という強い思いにより、入院中は毎日、2、3時間のリハビリを一生懸命行っておられました。
やがて、足に装具を付けて杖歩行で約20m程度は歩けるようになられました。当時、その患者様の歩行リハビリを担当していた理学療法士は、飛び跳ねるように喜んでいましたが、患者様自身はあまり喜ばれていない様子でした。
ある日、患者様は私にこうおっしゃいました。「歩けるのは嬉しい、でも本当は外で歩けるようになりたい、いつもリハビリテーション室や病棟で歩く練習をしているけど、外はまだ歩いていない。今のままでは外で歩けるか自信がない。前のように外で毎日、妻と散歩がしたいんだ」
【まとめ】
「歩く」という思いには、人それぞれ色んな思いがあるということを知りました。「歩く」とは手段であって、そこには必ず繋がる目的がある。この患者様は「歩く」という基本動作を出来ることで、大好きな奥さんと一緒に散歩をして、これからの人生に充実感を感じる。だからこそ、「歩く」は歩けるだけではダメなんだ。患者様のそれぞれの思いの「歩く」をしっかり感じ取り、「しているADL」に結びつける「歩く」を私たちリハビリテーションの専門家は提供しないといけないと思わされました。「歩く」とはその人の「人生そのもの」なんだとも。
《ご執筆者》
堀内寛之 作業療法士
AMPS認定評価者、A-one認定評価者、早期離床アドバイザー認定、住環境コーディネーター2級、LSVT BIG認定セラピスト
高の原中央病院 作業療法士
これまでに作業療法開設に3回たずさわり、現在に至る。
著明なDr陣による股関節・膝関節の人工関節を中心に、作業療法を展開。
また、腱板損傷術後、肩 リバース型人工骨頭術後、関節鏡視下骨性バンカート修復術後のリハビリにも携わる。肩のリハビリでは、日本で初めてPTになられた方々の、著明な先生のご指導を受けた実績もある。
(実績)
・2014.09.20(土)-21(日)第56回全日本病院学会in福岡
『当院におけるMIS -THA術後患者へ動作制限を設けない場合の早期脱臼率の調査』
・2015.09.12(土)-13(日)第57回 全日本病院学会 in 北海道
『低栄養状態の患者様へロイシンというタンパク質強化の栄養補助剤を使用した症例について』
・2015.12.13(日)公益社団法人 大阪府理学療法士会主催 大阪市北ブロック 福島区民センター 公開講座
『よいリハビリでしっかり健康づくり』 ~栄養と運動の大事な関係~
など文献発表、現在「うっぷす!!」にてセラピスト向けの講演を全国にて行う。
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