コラム

変形性膝関節症における歩行の特徴と原因、歩行分析についてご紹介

変形性膝関節症の患者さんは多く、理学療法において頻繁に関わる疾患だと思います。

H28年国民生活基礎調査の概況によると、要介護状態に陥った主な疾患として、要支援者では関節疾患が最も多く、その多くが変形性膝関節症です。

また、日本人の40歳以上の変形性膝関節症の有病率は、男性で42.0%、女性で61.5%であり、X線で診断される変形性膝関節症の患者数は2,530万人と推定されています。

これらのことから、変形性膝関節症の歩行の特徴と原因、歩行分析について理解を深めておくことは、理学療法士として避けて通れぬ必須項目であると言えるでしょう。

この記事では、変形性膝関節症の詳細、歩行の特徴と歩行分析、リハビリテーションについてご説明します。

変形性膝関節症の症状と原因

変形性膝関節症は、加齢、肥満、遺伝的因子、力学的負荷など多くの原因が関与して発症する疾患です。

なかでも力学的負荷およびその蓄積は、関節軟骨の初期変性とその破壊、および軟骨下骨で起こる骨のターンオーバー(骨吸収と形成)の異常に関与する要因です。

進行の過程では、軟骨細胞外基質(マトリックス)を分解する酵素が産出され、この酵素がマトリックスを破壊します。

また、軟骨下骨で行われている骨のターンオーバーのバランスを乱し、軟骨下骨のミネラル化の減少が起こり、マトリックスの破壊をさらに助長します。

関節軟骨破壊や関節周辺の骨変化が主な病態とされていましたが、近年では半月板や関節包・靭帯・筋を含む関節構成体すべての退行変化として捉えられています。

このような病理学的変化を基盤として、臨床的には膝関節痛、関節水症、関節運動時の轢音、膝関節可動域制限、局所的な炎症を呈します。

変形性膝関節症における歩行の特徴と歩行分析

変形性膝関節症の歩行はどういった特徴があるのか、どう歩行分析すればよいのか、そのメカニズムについて解説していきます。

変形性膝関節症の歩行の特徴

変形性膝関節症が進行すると、次第に内反膝変形をきたし、歩行時に膝関節の外側への横揺れを生じるようになります。

いわゆるO脚でガニ股という高齢者に多い歩き方がイメージできると思います

この、膝関節の外側への横揺れが生じる現象は “Lateral thrust(ラテラルスラスト)“と呼ばれ、まさに変形性膝関節症における歩行の特徴と言えます。

変形性膝関節症の歩行分析、ラテラルスラストについて

変形性膝関節症のラテラルスラストは、どのようなメカニズムで生じているのでしょうか。

ラテラルスラストが起こる原因として、大殿筋下部線維、大内転筋、前脛骨筋、後脛骨筋などの筋力低下が挙げられます。

荷重応答期に活動する上記の筋は、股関節内転モーメントと足関節内反モーメントを発揮させて、前額面内で大腿骨と脛骨を直立下させることに役立ちます。

これらの関節モーメントの合成作用として、膝関節が中立位へと保持されます。

 
変形性膝関節症では、このような復元力を供給する歩行パターンの生成が困難であり、その結果として立脚中期に膝関節は内反位に置かれ、単脚支持期の荷重負荷に伴い内反ストレスが増大すると考えられます。

ただし、立脚初期に股関節内転モーメントが発揮されるのは、踵接地後のほんのわずかな時間だけです。

その直後から大臀筋上部線維による股関節外転モーメントが発揮され、股関節の側方制動に役立ちます。

大殿筋上部線維や中殿筋の筋力が低下すると単脚支持期に骨盤が立脚側へ側方移動しながら遊脚期へ傾斜するように回転するため、膝関節の内反ストレスが増大します。

その場合には、荷重応答期から立脚中期にかけてラテラルスラストが生じます。

変形性膝関節症のリハビリテーション

変形性膝関節症の治療として、薬物療法(NSAIDや外用薬、ステロイド剤)や物理療法(温熱・冷却療法や電気療法)、そして運動療法、装具療法といった保存治療があります。

病期が進行するに従って、保存療法の有効性が低下するため手術へ移行します。

ここでは、変形性膝関節症のリハビリとして運動療法、装具療法についてご紹介します。

変形性膝関節症の運動療法

変形性膝関節症の運動療法として以下の3つを挙げますが、これらのトレーニング・エクササイズを組み合わせて行うことが効果的です。

1)筋力増強トレーニング

運動療法の主体となるものが、萎縮した大腿四頭筋に対する筋力増強トレーニングです。

具体的な方法としては、等尺性、等張性、等運動性運動があります。

変形性膝関節症では膝の運動時に疼痛が多いことから、SLR(Straight Leg Raising:下肢伸展挙上)などの等尺性運動が推奨されています。

2)関節可動域エクササイズ

変形性膝関節症では屈曲拘縮から始まる可動域制限が出現しますが、その屈曲拘縮は立位支持へも影響し、特に筋力低下を伴うと膝崩れの原因となります。

また、歩行効率も低下させ、膝伸展時痛や夜間痛の原因にもなるため、関節可動域エクササイズは疼痛と歩様改善の点で効果があり、入浴などの温熱療法を併用するとより効果が上がります。

3)ウォーキング

変形性膝関節症でも歩行時痛が軽度であればウォーキングは推奨され、歩行時痛が強い場合には、つかまり立ちの足踏み練習が有効です。

ウォーキングは、筋力増強以外に平衡機能の向上、心理的・精神的効果・体重減少などの点で有用とされています。

変形性膝関節症の装具療法

装具としては足底板が有効です。

内反膝の場合は外側ヒールを高くしたlateral wedge(ラテラルウェッジ)を装着します。

ラテラルウエッジは、下肢機能軸の垂直化などによって摩耗した内側関節軟骨へのストレスを軽減させる効果が報告されています。

また、ラテラルスラストを制動する効果もあり、進行予防にも繋がります。

一方、膝関節装具は疼痛軽減と関節の支持性獲得、内反や屈曲拘縮などの変形予防と矯正が目的となります。

内反変形がみられるが歩行能力は保たれている場合には矯正装具が、支持機構が破綻し歩行困難な場合は支柱付き装具が選択されます。

しかし、膝装具を長期に使用すると、膝周囲筋の筋力低下を招くため筋力増強トレーニングを併用しながら装具離脱を目指すことも重要です。

まとめ

変形性膝関節症の詳細、歩行の特徴と歩行分析、リハビリテーションについてご紹介させて頂きました。

変形性膝関節症は、理学療法場面で頻繁に関わる疾患です。

理解を深め、患者さんへの自主トレーニング指導にも有効活用していきましょう。

<参考文献>
1)石井慎一郎.動作分析 臨床活用講座 バイオメカニクスに基づく臨床推論の実践 第7版 株式会社メジカルビュー社2015
2)小林孝.内側型変形性膝関節症患者の歩行分析に関する研究.神戸大学医学部紀要,61(4):89-94.2001
3)村田伸.変形性膝関節症の通常歩行と最速歩行における歩行パラメータの比較. Japanese Journal of Health Promotion and Physical Therapy Vol.8,No.1:19-2,2018
4) 池田浩.変形性膝関節症に対する理学療法.順天堂医学.2008,54.367~371

執筆者紹介

AYUMIEYE事務局

AYUMI EYEとは、早稲田エルダリーヘルス事業団が開発した 最先端の歩行能力解析デバイスです。

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