コラム

【歩行分析】骨盤の異常運動9つ、原因と歩行のメカニズムに及ぼす影響

歩行分析において、正常とは違う異常運動を見極め、原因を追求することは大切です。

しかし、「正常とは何か違うけど、それが何なのか漠然としている」「骨盤に異常がある場合、どのような歩行になるのか知りたい」などの悩みを抱える理学療法士さんは多いと思います。

漠然と見て歩行分析をするのは至難の業ですが、体の各関節ごとにどのような異常運動があるかを理解しておくと、歩行分析がしやすくなります。

そこで、この記事では、骨盤の異常運動が歩行に与える影響を9つご説明致します。

目次

歩行分析における骨盤の異常運動9つとは

歩行分析における骨盤の異常運動とは、どのような状態を表すのでしょうか。

歩行分析で、骨盤をピンポイントに観察するのはなかなか難しい場合が多いです。

例えば、これから説明する9つの骨盤の異常運動の中に、「骨盤の持ち上げ」と「骨盤の落ち込み」があります。

この2つ、観察で区別がつくのでしょうか。

どちらかの骨盤が持ち上がる状態になると、逆側の骨盤は落ち込んでいるように見えるかもしれません。

左右どちらが異常なの?持ち上げなの?落ち込みなの?と混乱してしまいます。

そのため、ここからご説明する骨盤の異常運動9つをそれぞれ理解し、整理していきましょう。

1.骨盤の異常運動「もち上げ」の歩行分析

骨盤の持ち上げは、遊脚初期と遊脚中期に生じる異常運動です。

股関節と膝関節が十分に屈曲していないこと、また、足関節が底屈し過ぎることに対する代償運動として現れます。

よって、骨盤のもち上げを観察するためには、膝や足関節の評価も必要だと言えます。

遊脚期における骨盤のもち上げの原因

遊脚期における骨盤のもち上げの原因は、遊脚肢をもち上げ、トゥクリアランスを確保するために、意図的に行われる動作、つまり代償運動です。

要するに、足を引きずらないようにするために、わざと大きく骨盤から足全体を持ち上げるようにして歩くというイメージです。

遊脚期において骨盤のもち上げが歩行メカニズムに及ぼす影響

遊脚期において骨盤のもち上げが歩行メカニズムに及ぼす影響ですが、それはエネルギー消費が増大することです。

つまり、代償運動による過剰な動きによって、普通よりも多くエネルギーを使わなければならないということになります。

2.骨盤の異常運動「後傾」の歩行分析

骨盤後傾の異常運動は珍しいのが特徴です。

例えば、骨盤前傾が強い場合、その状態から通常の前傾位に戻る時、骨盤は後傾します。

正常な前傾位(約10°前傾)に戻ることは、異常とはみなされないので、よほど強い後傾でないと異常とは言えないのです。

骨盤後傾の原因

骨盤後傾の原因は以下の通りです。

・ハムストリングスの短縮
・骨盤の後傾によって股関節伸展筋群の長さを短縮させ、発揮筋力を減少させるための代償
・足を前方へ運ぶための代償運動
・腰痛
・腰椎の伸展制限

筋の短縮やアライメント不良、痛みといった物理的要因に加え、代償運動の要素もあるのだということがわかります。

骨盤後傾が歩行のメカニズムに及ぼす影響

骨盤後傾が歩行メカニズムに及ぼす影響は、立脚中期で膝関節が屈曲し過ぎることです。

これは例えば、高齢者でよく見る、骨盤後傾位で立位を保って手を後ろに組んでいるお年寄りを想像してみるとわかりやすいと思います。

このような立位の場合、膝関節は少し屈曲位であることが殆どです。

3.骨盤の異常運動「前傾」の歩行分析

骨盤の異常運動「前傾」は全ての相に共通している分析です。

歩行においてどのように影響しているのか、確認していきましょう。

骨盤前傾の原因

骨盤前傾の原因は以下の通りです。

・腹筋群の筋力不足
・股関節伸筋群の筋力不足
・股関節屈筋群の拘縮または痙縮
・前傾した体幹の二次的現象

骨盤前傾が歩行のメカニズムに及ぼす影響

骨盤前傾が歩行メカニズムに及ぼす影響は、腰椎前湾を強め腰痛を招くことです。

骨盤の前傾が強いことは、「反り腰」に繋がるため、注意が必要ですね。

4.骨盤の異常運動「前方回旋不足」の歩行分析

脊椎に痙縮を有する患者は、骨盤回旋がなくなります。

手術が原因のケースも存在します。

歩行観察によって見れる印象として「体が硬そう」という感じです。

少しロボットのような動きに近く、滑らかさに欠けるイメージです。

前方回旋不足の原因(荷重応答期と遊脚期)

前方回旋不足の原因は以下の通りです。

・痙縮によるブレーキ的な動きから生じるニ次的な現象
・荷重応答期で、大腿四頭筋と股関節伸筋群の筋発揮力が少なくて済むようにするための代償運動
・反対側の後方回旋不足
・腰痛

前方回旋不足が歩行のメカニズムに及ぼす影響

前方回旋不足が歩行メカニズムに及ぼす影響としては、歩幅の短縮をもたらします。

つまり、一歩が小さくなり、ちょこちょこ歩く印象になります。

5.骨盤の異常運動「後方回旋不足」の歩行分析

骨盤の異常運動「後方回旋不足」の原因や歩行に与える影響を確認していきましょう。

後方回旋不足の原因(立脚中期と遊脚期)

後方回旋不足の原因は以下の通りです。

・体幹と骨盤の動きに関与する筋が、上手くコントロールできなくなる
・腰痛
・股関節が屈曲し過ぎることによる二次的現象

後方回旋不足が歩行のメカニズムに及ぼす影響

後方回旋不足が歩行のメカニズムに及ぼす影響は、反対側の歩幅の短縮をもたらします。

つまり、次の一歩が出にくいといったイメージです。

6.骨盤の異常運動「過度の前方回旋」の歩行分析

観測の骨盤が前方に過度に出た状態をいいます。

あるいは遊脚肢とともに前方に移動する場合にも過度の前方回旋が起こります。

過度の前方回旋の原因

過度の前方回旋の原因は、不十分な股関節屈曲によって、脚を前方へ振るための意図的運動であると言えます。

要するに、股関節が十分に屈曲しないため足を前に運べない場合、骨盤を強く勢いよく前方回旋することによって、その力を利用して足全体を前に運ぶというイメージです。

過度の前方回旋が歩行のメカニズムに及ぼす影響

過度の前方回旋が歩行メカニズムに及ぼす影響は以下の通りです。

・遊脚終期における歩幅の延長
・腰痛をもたらすことがある

7.骨盤の異常運動「過度の後方回旋」の歩行分析

観察肢の骨盤が後方に残った状態を過度の後方回旋といいます。

それだけではなく、遊脚終期で骨盤が急激に後方回旋する動的な動きもあります。

それは反対側が踵接地を維持したまま行います。

かなり急速な運動であり、中程度の歩行速度で観察されます。

過度の後方回旋の原因(立脚中期と遊脚期)

過度の後方回旋の原因は以下のとおりです。

・脚の動きから骨盤の動きを分離させる能力の欠如
・股関節の過度の屈曲に対する代償運動
・踵のもち上げ不足を伴う下腿三頭筋の筋力不足
・過度の底屈の二次的現象

つまり、骨盤の動きが正常なタイミングで前方へ移動しない原因として、股関節との協調や足関節の異常による前方移動の困難さが挙げられるということです。

過度の後方回旋が歩行のメカニズムに及ぼす影響

過度の後方回旋が歩行メカニズムに及ぼす影響は以下の通りです。

・前方への動きが減少することがあります
・前方への動きを改善するための意図的運動

8.骨盤の異常運動「観察肢の骨盤の落ち込み」の歩行分析

骨盤の異常運動「観察肢の骨盤の落ち込み」の原因や歩行に与える影響を確認していきましょう。

観察肢の骨盤の落ち込みの原因(荷重応答期と立脚中期)

観察肢の骨盤の落ち込みの原因は、観察肢の短縮です。

つまり、脚長差が原因ということです。

観察肢の骨盤の落ち込み(荷重応答期と立脚中期)が歩行のメカニズムに及ぼす影響

観察肢の骨盤の落ち込みが歩行メカニズムに及ぼす影響としては、背中の痛みの原因に繋がることが挙げられます。

常に片側の骨盤の落ち込みが生じていると、背中にアンバランスな負荷がかかって痛みに繋がる可能性があるということです。

観察肢の骨盤の落ち込みの原因(遊脚期)

観察肢の骨盤の落ち込みの原因(遊脚期)は以下の通りです。

・反対側の股関節外転筋群の筋力不足 ※いわゆる外転筋歩行
・初期接地で観察肢を床に近づけるための意図的運動
・内転筋群の拘縮もしくは痙縮

観察肢の骨盤の落ち込み(遊脚期)が歩行のメカニズムに及ぼす影響

観察肢の骨盤の落ち込み(遊脚期)が歩行メカニズムに及ぼす影響は以下の通りです。

・反対側の立脚肢の安定性を減少させることがある
・エネルギー消費の増大
・観察肢のクリアランスの減少
・背中の痛みを生じさせることがある

9.骨盤の異常運動「反対側の骨盤の落ち込み」の歩行分析

骨盤の異常運動「反対側の骨盤の落ち込み」の原因や歩行に与える影響を確認していきましょう。

反対側の骨盤の落ち込みの原因(荷重応答期と立脚中期)

反対側の骨盤の落ち込みの原因(荷重応答期と立脚中期)は以下の通りです。

・観察肢の股関節外転筋群の筋力不足
・反対側の初期接地で反対側の足を床に近づけるための意図的運動
・股関節内転筋群の拘縮もしくは痙縮

反対側の骨盤の落ち込みが歩行のメカニズムに及ぼす影響(荷重応答期と立脚中期)

反対側の骨盤の落ち込みが歩行メカニズムに及ぼす影響(荷重応答期と立脚中期)は以下の通りです。

・立脚肢の安定性が減少することがある
・遊脚肢(反対側)のトゥクリアランスの減少
・エネルギー消費が増大することがある

反対側の骨盤の落ち込みの原因(遊脚期)

反対側の骨盤の落ち込みの原因(遊脚期)は、立脚期にある反対側の脚の短縮によってトゥクリアランスの減少が起こり、トゥクリアランスを確保するために観察肢の骨盤を持ち上げる

反対側の骨盤の落ち込みが歩行のメカニズムに及ぼす影響(遊脚期)

反対側の骨盤の落ち込みが歩行メカニズムに及ぼす影響は、背中の痛みを生じさせることがあることが挙げあられます。

〈参考文献〉

1)Kirsten Gotz-Neumann (2014) 観察による歩行分析 原著 第1版第14刷 医学書院

まとめ

骨盤の異常運動が歩行に与える影響についてご説明致しました。

骨盤は、股関節と体幹と連動している、影響力の大きい部位です。

特に高齢者は、円背で骨盤後傾位を呈している方が多い状況にあります。

骨盤の異常による歩行について理解を深め、明日からの臨床に活かしていきましょう。

歩行の各相における関節と筋肉の動き股関節と骨盤の角度と動きにて、健常歩行における骨盤についてご紹介していますので、こちらもご参照下さい。

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