歩行運動を開始するかを意識はしても歩行中に手足の動きを意識している人はいないでしょう。意識せず、半ば自動的に歩くために脊髄が一役になっていることはご存知でしょうか?
歩行と脊髄の関係をご紹介しましょう。
歩行に関わる脊髄の重要な機能
ふらふらして姿勢が保てない場合、人は安定して歩くことができません。人が姿勢を保つ上で重要な機能となるのが深部感覚です。
深部感覚とはものを触った時に感じる触覚や温痛覚、圧覚という表在感覚とは異なり、手足と体の相対的な位置を感じる位置覚や運動の方向がわかる運動覚など普段あまり意識をして感じていない感覚のことです。深部感覚は脊髄の中を通っているので脊髄が痛むと目を閉じてじっと立つことや安定して歩くことが難しくなります。
また近年、脊髄には歩く時のリズム(左右の筋肉をスムーズに交互に動すことや筋肉の緊張と弛緩を順序よく行う)を形成する信号を無意識に出していることが分かりつつあります。
実際に犬や猫では脊髄を切り離しても足が周期的に動くことがわかっており、脳が歩く時の筋肉の動作を全て決めているのではなく、脊髄そのものに歩く時の筋肉の動きを指示する信号を出す機能があることが示唆されます1)。
このように脊髄には歩く時の姿勢を維持する機能と歩くためのリズムカルな運動を行うための機能があることがわかっています。
脊髄損傷になると人は歩けない?
では脊髄が傷んだ場合、人は歩けなくなるのでしょうか?前述した通り、歩くには筋肉のリズムカルな運動が必要であり、そのためには多くの筋肉の協調的に動くが必要があります。
脊髄が損傷すると、個々の筋肉の協調的な動きができなくなり歩けなくなります。また踏ん張る力はあっても深部感覚が障害されると自分の姿勢が分からない、足を動かす位置が正確に掴めないといった障害で歩くことができなくなります。
しかし、歩行リハビリテーションを開始すると麻痺を起こしている足に筋肉の周期的な動きが出てくることが判明しており2)、脊髄が完全に傷んでしまった状態ではなく、足に少し力が入る場合には6割以上の確率で歩けるようになるとの報告があります3)。
ただ、杖や歩行器などの歩行補助具を一切使わないで歩けるようになる訳ではありません。
脊髄損傷に対する最近の歩行リハビリテーション
脊髄損傷に対する歩行リハビリテーションとして近年注目されているのはロボットを用いたリハビリテーションです。
ロボットといってもPepperに代表されるような自立型とボットではなく、装着して使用するロボットスーツです。歩くためには多くの筋肉の協調的な動きが必要です。このロボットスーツを装着することで歩く時の強調的な筋肉の動きを補助し、歩行を可能とします4)。
またHAL®︎(Hybrid Assistive Limb)というロボットスーツを用いた脊髄損傷に対する歩行リハビリテーションを行った場合はロボット着用時だけでなく、ロボットスーツを外した後にも効果があったと報告があります。
リハビリテーション前には足を前に出す動きが遅かった人がリハビリテーション後にはロボットが無くても歩くのが早くなったとの報告もあります5)。
ただ、やはり機能が完全に回復する訳ではないこと、また機能が改善する場合でもリハビリテーションの期間が長くなることから、患者のリハビリテーションに対するモチベーションを維持することが課題となります。
モチベーションを維持するため、モーションキャプチャーや加速度センサーにより歩き方を客観的に評価し、患者自身に歩き方がよくなっていることを実感する取り組みが多くなってきています。
AYUMI EYEは腰に巻いて10m歩くだけで歩行速度、歩幅、バランスマップ、歩行周期のばらつきといった歩行の解析を行うことができます。
モーションキャプチャーのようにカメラを設置する必要や、専用の場所を用意する必要がなく、導入が容易なためリハビリテーションの効果を確認する機械として優れていると考えます。
まとめ
今回は歩行における脊髄の関わりについて解説を行いました。
脊髄を損傷すると安定してリズムカルに歩くことができなくなりますが、最近の歩行リハビリテーションで機能の改善は期待できるようになっています。
AYUMI EYEは今後の脊髄損傷に対する歩行リハビリテーションの一助になりえると考えます。
参考文献:
1)河島則天. 歩行運動における脊髄神経回路の役割. 国リハ研. 30. 2009. 9-14
2)Calancie, B. et al. Involuntary stepping after chronic spinal cord injury. Evidence for a central rhythm generator for locomotion in man. Brain. 117. 1994. 1143-1159.
3)福田文雄ほか. 改良Frankel分類による脊髄損傷の予後予測. リハ医. 38(1) 1997. 581-90
4)藤縄光留ほか. 不全型脊髄損傷者の歩行再建と理学療法. 理療 ジャーナル. 43. 2009 .203−211
5)浅井直樹ほか. 脊髄損傷-不全型脊髄損傷の歩行分析-. J Clin Rehabil. 29(11) 2020. 1096-1101
歩行解析デバイスAYUMI EYEで歩行分析
AYUMI EYEはご利用者様の腰に専用ベルトを用いて装着し、10m歩くだけで評価を行うことが可能です。
バランスや歩行速度などがその場でiPad専用アプリにて解析され、結果が点数・マップ化してすぐに見ることができます。
測定者の評価の効率が上がるとともに、ご利用者様にもその場で結果を共有できるため、歩行の改善や歩行補助具の選定があっているのか、互いに確認することができます。
簡便な操作で分かりやすい結果をフィードバックできるAYUMI EYEを使用し、歩行分析を行ってみてはいかがでしょうか。
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