歩行中に活動する主要な筋肉として、股関節や大腿の筋肉とともに重要な筋肉に挙げられるのが「下腿三頭筋」です。
下腿三頭筋は、3つの筋肉で構成されており、歩行の際にそれぞれ役割が異なります。
今回こちらの記事では、歩行の際の下腿三頭筋の作用について詳しくご説明します。
歩行における下腿三頭筋の役割はこの記事で確認していきながら、これからの歩行訓練にお役立てください。
下腿三頭筋の構造と役割
始めに、下腿三頭筋の主な構造と役割について整理していきましょう。
下腿三頭筋はふくらはぎの筋肉で、浅い部分に「腓腹筋」が内側頭と外側頭に2つあり、深い部分に「ヒラメ筋」があります。
下記の表でそれぞれの起始・停止・支配神経と作用について確認していきましょう。
なお、下腿三頭筋の主な役割は足関節の底屈に働くため、下腿三頭筋が短縮して足首が思うように動かなくなってしまうと、歩行の際につま先が地面や段差に引っ掛かりやすくなります。
【参考】:株式会社STROKE LAB ニューロリハビリ研究所 触診【下腿三頭筋 腓腹筋―ヒラメ筋の起始停止:脳卒中×歩行の関係性】
【参考】:STROKE LAB ニューロリハビリ研究所 脳卒中×触診 【下腿三頭筋 腓腹筋-ヒラメ筋の起始停止】歩行の関係性
歩行開始時における下腿三頭筋の収縮
歩行開始時の力学的特徴として、下腿三頭筋の活動低下と前脛骨筋の活動による足圧中心(以下COP)の後方移動があります。
歩行開始に、下肢筋群を前額面・矢状面上で相互に作用しながら、一度振り出し側後方へCOPを移動させることで、支持側へ重心移動しながら下肢を前方へ振り出していくことが可能です。
この歩行開始時に見られるCOPの後方移動時の際に、下腿三頭筋の筋活動が低下するとともに伸張されることが考えられています。
そのため、下腿三頭筋の伸張を伴ったCOP後方移動を促す運動療法を行うことが重要であることが示唆されます。
また、下腿三頭筋の衰えやバランスの崩れを観察する際に足部の動きの確認をしていくこともポイントになるでしょう。
【参考】:学協会向け大会支援システム「Confit(コンフィット)」 [0608] 歩き始めにおける下腿三頭筋の収縮動態
腓腹筋とヒラメ筋の歩行の動き
次に、歩行の加速時における問題について、腓腹筋とヒラメ筋の働きについてご説明します。
腓腹筋とヒラメ筋の歩行の動きについては、歩行・走行運動時立脚相のヒト腓腹筋及びヒラメ筋の動態を研究した調査結果が参考になります。
その調査では、歩行開始時のヒラメ筋の隆起は腓腹筋の隆起よりも先行していることがわかりました。
タイミングとしては、ヒラメ筋が足関節の背屈過程が変化する直前に一過性の増大を示しています。
一方、腓腹筋は足関節の背屈過程で隆起が出現しており、さらにこの際に膝関節も一過性に屈曲をしています。
なお、この腓腹筋の背屈過程での膝関節の動きは、筋への過剰な伸張を緩衝するためと推察されるでしょう。
また、このような足背屈過程で出現するヒラメ筋と腓腹筋の隆起の目的は、いずれも筋の伸張に抗した筋活動と推測されます。
そのため、足背屈の程度の少ない歩行においては速度に依存して筋の隆起も漸増し、筋短縮が十分なされることが考えられます。
【参考】:えがお鍼灸整骨院 守山院 歩行・走行運動時立脚相のヒト腓腹筋及びヒラメ筋の動態
腓腹筋の内側頭と外側頭には筋肉量の違いがある!
腓腹筋のうちでも内側頭と外側頭があることから、歩行機能の違いについても考慮する必要があるでしょう。
その点については、これまでに健常成人男性を対象にした歩行の加速時における腓腹筋の内側頭と外側頭の筋活動の違いについて調べた研究が参考になります。
この研究結果では、同作用を持つ腓腹筋でも下記のような違いがでることがわかりました。
- ・足関節の底背屈や回内外の筋活動量は、内側頭の方が外側頭よりも増大している
- ・足圧中心の変化に伴う筋活動量は前足部荷重・内側荷重ともに、内側頭の方が外側頭よりも筋活動量が増大する
以上の研究結果により、歩行の加速時における腓腹筋の筋活動量全般において、内側頭の方が外側頭よりも大きいことがわかりました。
また、この結果は多少の足部のアラインメントの違いがあった場合でも、内側頭の方が外側頭よりも筋活動量が増大することがわかっています。
さらに、腓腹筋の構成に関する報告では解剖学的な特徴として、筋横断面積が内側頭の方が外側頭よりも大きいことが判明しています。
このような結果から歩行訓練の際には、腓腹筋の内側頭と外側頭の筋活動量を考えた歩行バランスの評価・分析も有効になるでしょう。
【参考】:J-Stage 歩行の加速時における腓腹筋の内側頭と外側頭の筋活動の違い
まとめ
今回は「歩行における下腿三頭筋の役割と重要性」についてご説明しました。
歩行能力を維持・向上するためには、下腿三頭筋を効率的に鍛えていくことが必要です。
その際には、下腿三頭筋のなかでも腓腹筋の内側頭・外側頭、ヒラメ筋それぞれの動きの違いを理解しながら歩行訓練をしていくことが効率的なトレーニングにつながります。
また、下腿三頭筋の評価については、足部の動きを評価・分析していくことも必要になります。
最後に、歩行開始時の下腿三頭筋の評価や足部のアライメントの分析にも役立つ「AYUMI EYE」のデバイスをご紹介します。
AYUMI EYEは、歩行に必要な要素である「バランス」「リズム」「推進力」を正確に測定・評価することが可能です。
そのため、着地時のバランス状態や歩行時の足部の安定度もすぐに確認できるため、効率的な歩行訓練が実現します。
ぜひ、今回の記事を参考にしていただき、歩行分析や評価技術を高めて歩行能力向上にお役立てください。
(参考資料)
株式会社STROKE LAB ニューロリハビリ研究所 触診【下腿三頭筋 腓腹筋―ヒラメ筋の起始停止:脳卒中×歩行の関係性】
学協会向け大会支援システム「Confit(コンフィット)」 [0608] 歩き始めにおける下腿三頭筋の収縮動態
えがお鍼灸整骨院 守山院 歩行・走行運動時立脚相のヒト腓腹筋及びヒラメ筋の動態
J-Stage 歩行の加速時における腓腹筋の内側頭と外側頭の筋活動の違い
歩行解析デバイスAYUMI EYEで歩行分析
AYUMI EYEはご利用者様の腰に専用ベルトを用いて装着し、10m歩くだけで評価を行うことが可能です。
バランスや歩行速度などがその場でiPad専用アプリにて解析され、結果が点数・マップ化してすぐに見ることができます。
測定者の評価の効率が上がるとともに、ご利用者様にもその場で結果を共有できるため、歩行の改善や歩行補助具の選定があっているのか、互いに確認することができます。
簡便な操作で分かりやすい結果をフィードバックできるAYUMI EYEを使用し、歩行分析を行ってみてはいかがでしょうか。
お問い合わせ
03-5447-5470 受付時間:平日 9:00~18:00