「TUGテストを用いた歩行分析を実施したい」
「TUGテストの測定方法について正確に知りたい」
「TUGのカットオフ値や臨床への活用を知りたい」
という理学療法士さんは多いと思います。
TUGテストは、歩行分析において臨床現場で最も幅広く用いられている一般的な歩行能力テストであり、TUGテストを用いた研究報告も多く散在しています。
しかし、間違った方法で測定している臨床家は意外と多く、自己流になってしまいがちな評価でもあるので、しっかりと正しい測定方法を理解しておくことは大切です。
そこで今回、TUG歩行テストの正しい測定方法、カットオフ値など臨床での活用についても解説させて頂きます。
TUGテストとは?
TUGテストの正式名称は、Timed Up & Go Testです。
「肘掛のついた椅子にゆったりと腰かけた状態から立ち上がり、3mを心地よい早さで歩き、折り返してから再び深く着座するまでの様子を観察するもの」が原法です。
この機能テストを所要時間で評価したものがTimed Up & Go Testなのです。
TUGテストは、運動器不安定症の指標となっている歩行能力評価であり、つまり病気の診断基準としても用いられる標準的な検査なのです。
高齢者の生活機能、歩行能力を正しく評価する上で、TUGテストは信頼性が高く、下肢筋力、バランス,歩行能力、易転倒性といった日常生活機能との関連性が高いことが証明されており、高齢者の身体機能評価として広く用いられています。
(日本運動器科学会より)
TUGテストでわかること
TUGテストでわかることは、起立・着座能力、直線歩行能力、方向転換能力、所要時間、歩数等です。
一般的な評価である10m歩行テストは直線距離しか評価できませんが、TUGテストでは方向転換や起立・着座能力まで評価できることが特徴です。
日常生活では、まっすぐ歩くだけなどの状況は皆無であり、方向転換や立ちしゃがみなどの動作をしなければならないので、日常生活により近い場面を想定した評価ができるのが利点であると言えます。
TUGテストのカットオフ値について
TUGテストのカットオフ値は多くの研究によって報告されています。
日本整形外科学会で明示されているカットオフ値の研究とまとめると、以下の通りです。
・Shumway-Cook:転倒経験者と非経験者のカットオフ値は13.5秒
・Bischoff:地域在住高齢者と施設利用者のカットオフ値は12秒
・介護予防事業(2005):要支援の高齢者の平均値は12.2秒
・運動器不安定症のカットオフ値は11秒
・坂田(2007):10秒未満の者は自立歩行
11~19秒では移動がほぼ自立
20~29秒は歩行が不安定
30秒以上は歩行障害あり
TUGテストの測定方法
TUGテストの正しい測定方法についてご説明します。
測定方法が違うと、正しい値ではないという事態になってしまうので、正確な測定方法で実施することが大切です。
事前準備
事前に準備しておく必要があるのは、以下の通りです。
・最低4m×1.5m程のスペース(コーンを回る時の幅を考慮する)
・なるべく静かで邪魔の入らない環境
用意するもの
用意するものは以下の通りです。
・コーン1つ
・椅子
・メジャー
・ストップウォッチ
・ビデオカメラ(必要に応じて)
測定方法
TUGテストの測定方法は以下の通りです。(日本理学療法士協会資料参照)
① 開始肢位は背もたれに軽くもたれかけ、手は大腿部の上に置いた姿勢とします。その際、両足が床に着くように配慮します。
② 椅子から立ち上がり、3m先の目印を回って、再び椅子に座るまでの時間を測定します。0m地点は椅子の前脚とし、3m地点はコーンの中心とします。
③測定者の掛け声に従い、一連の動作を「通常の歩行速度」と「最大の歩行速度」 で1 回ずつ(計2回)行ってもらいます。
④測定者は患者さんの身体の一部が動き出すときからお尻が接地するまでの時間を計測します。厳密な規定ではなく、立ってから座るまでです。
⑤コーンの回り方は患者さんの自由とします。
⑥ 2 回の測定後、小さい値(速い時間)の方を採用します(2 桁目は四捨五入)。
⑦日常生活において歩行補助具を使用している場合には、そのまま使用します。
⑨ 椅子については、オリジナルは肘掛タイプですが、肘掛が無くても構いません。
「1 回目は、いつも歩いている速さで、3m先のポールを回ってきてください。回る方向はどちらでもかまいません。戻ってきたらすぐに椅子に腰掛けてください。 2 回目は、出来る限り早く歩いて、3m先のポールを回ってきてください」 と教示しましょう。
計測後、ビデオカメラにて歩数や歩行の滑らかさなどを分析します。
TUGテスト時の注意点
患者さんがコーンを回るときに転倒の恐れが高く、座るときに勢いがつき過ぎて倒れたりする恐れがあるため、注意しなければなりません。
また、測定環境と測定方法の違いによって、タイムに誤差があることも報告されています。
測定環境の違いは、床面の違いや雑音、温度や湿度時間帯など違いのことを示します。
測定方法の違いは、教示方法、ストップウォッチを押すタイミングなどの違いを示します。
つまり、これらの違いによって、差が出てしまうのです。
そのため、測定環境や測定方法をなるべく同じにして評価しなければなりません。
AYUMI EYEで簡単測定!
TUGテストについてご紹介してきましたが、TUGテストは手動でストップウォッチを使って計測するため、誤差が生じてしまう問題があります。
また、ビデオカメラの撮影だけでは歩行能力を数値化して客観的に分析できません。
しかし、AYUMI EYEという機械を用いることで、それらの問題は解決できます。
AYUMI EYEは、3軸加速度センサーモジュールとiPad(iPhone)専用アプリを用いて、歩行時の加速データに基づき歩行機能を「推進力」「バランス」「リズム」の3点から分析するデバイスです。
AYUMI EYEで歩行分析をすると、「リハビリ訓練の効果をわかりやすく説明したい」「歩行分析は観察項目が多すぎて評価がしずらいので、効率的に測定したい」「運動習慣を身に着けてほしい」などの課題を解決してくれます。
AYUMI EYEによる客観的で定量的な歩行分析は、転倒予防や健康寿命の延伸だけでなく、患者さんとのコミュニケーションを円滑にし、歩行へのモチベーション向上に寄与します。
AYUMI EYEは、どこでも簡単に測定することができ、アプリで結果を見ることができるので、とても便利なのが特徴です。
まとめ
TUGテストの詳細な測定方法やカットオフ値、臨床での活用などをご紹介しました。
TUGテストは歩行分析において最もメジャーで一般的な歩行能力テストなので、正しい測定方法をきちんと理解しておくことが大切です。
また、AYUMI EYEを用いることで、TUGテストで得た結果だけでなく、さらに詳細な歩行能力を明示でき、数値化して分析することができるので、歩行の専門家として是非参考にして頂ければと思います。