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今回、基礎的な内容として理学療法士の方に、歩行動作の仕組みと歩行周期についてお伝えします。
歩行動作の仕組みについて歩行動作の仕組みについて
私たちは、常に重力の影響下にあり、じっと立っているときも体は前後左右に動いていますが、多くの方は無意識に立っていると思います。
これは地面と接している足裏を中心として重力に抗うための「抗重力筋」の働きによるものです。
代表的な「抗重力筋」は体の前面にある腹直筋・腸腰筋・大腿四頭筋、そして体の後面にある脊柱起立筋・広背筋・大臀筋・下腿三頭筋があります。これがバランスを取り続けることで人は立つことができています。
歩行はこの抗重力筋のうち、後ろに倒れないようにする筋肉を緩めることで体が前に倒れ出す反応を利用して開始されます。このバランスを崩した状況から、再度体を支えるための筋活動を連続して行うことが歩行動作となります。
歩行周期について
歩行動作を開始するためにはまず、体が前に倒れる必要がありますが、両足が地面についた状態では当然ただ倒れるだけです。
歩くためには片方の足を出して体を支えなければなりません。これを周期的に行うことが歩行の基本になります。
この周期的な行動のうち、足裏で地面を踏み、体を支える時期を立脚期、片方の足をもち上げて前に振り出す時期を遊脚期といいます。立脚期、遊脚期のそれぞれの時期を観察することで、どの時期にどんな活動が見られるのか、整理して考えることができます。
歩行周期:立脚期について
この時期は、足裏が徐々に床に接地していき体を支えることが必要となります。
この時期の観察で重要なものが床反力です。床反力とは、体が床に触れた時に生じる力のことであり、歩行時、体は床から跳ね返ってきた力に反応しながら、筋力を発揮しています。
①踵接地期 (Loading response)
踵が床に着く際、足は体よりも前にあり床反力も体の前でおこります。そのため、体は前に倒れ足関節も底屈方向に向かう力が働きます。その力に対抗するように脊柱起立筋群や大殿筋で体が前に倒れないよう支え、足首ではつま先を持ち上げる前脛骨筋が働きます。
②立脚中期 (Midstance)
この時期の床反力は、体が床に対して真っすぐに立ってくる時期なので、床反力も垂直に近い力がかかり重心も高く不安定です。そのため脊柱起立筋群や殿筋群で体を支えながら重心の位置をコントロールしています。
③立脚後期 (Terminal stance)
この時期では、体は前に移動していき床反力は体の後方を通ります。
この時、どんどん足関節で背屈が進み、この背屈に対抗するように下腿三頭筋を働かせて地面を蹴りだす動作へと繋がっていきます。この立脚後期の蹴りだしの強さが、遊脚期のスイングとなっていきます。
歩行周期:遊脚期について
遊脚相では、立脚期の影響を受けて下肢は振り子様の動きが生じていきます。
①遊脚初期 (Initial swing)から遊脚中期 (Mid swing)
立脚後期で生み出された前方への推進力によって、大腿部が前方に加速し股関節屈筋が強く活動する、この時、慣性の力によって膝が屈曲しすぎないよう大腿四頭筋の活動がバランス良く働くことが要求されます。
②遊脚中期 (Mid swing)から遊脚終期 (Terminal swing)
足が振り子様に体の真ん中あたりから前方へと移動していくと、徐々に振り子の動きは減速していきます。この時、足が前に行き過ぎるのを止めるため、股関節伸展筋が働くことや、次におこる踵接地での膝伸展による衝撃緩和のための膝屈筋の活動が起こってきます。
このように、歩行周期において、それぞれの時期によっておこる特徴を理解し分析していきましょう。
自然歩行の特徴について
①適切な歩行周期によるリズム歩行
両足の対象的な交互運動によるリズミカルな歩行が望ましく、その歩行周期の割合は、立脚期60%・遊脚期40%が平均とされています。
なお、立脚相の前後10%ずつは両脚支持が見られます。歩行速度を上げるには一般的に遊脚期を短縮して速度の上昇を得ており、立脚期は大きく変わりません。
②エネルギー効率の良い歩行
重心の位置が大きくずれることなく、上下左右への振幅が少ない歩行がエネルギー効率の良い歩行とされています。
そのためには適切な時期の筋活動は必要不可欠です。そして、それだけではなく適切な時期での適切な関節角度が重要となります。特に股関節・膝関節・足関節の角度は重要となります。
良い歩行には十分な関節可動域が必須です。
③バランスの取れた歩行
両上肢の振りや、体幹の回旋運動によってバランスをとっています。特に体幹は、上部と下部で逆方向に回旋させることで、重心の大きな移動を防いでいます。
まとめ
今回、歩行を観察するための基本知識として歩行動作の仕組みについてご紹介させて頂きました。
「正常」を知らなければ「異常」は気づけません。今回の内容を踏まえて重心の位置や筋活動、関節の動きを実際に観察し分析しましょう。
これから、患者様や対象者の方とお会いするたびに、その姿勢や動作、歩行を観察することを繰り返してみてください。そして歩行周期のどの時期にどの様に感じているのか、どの時期に力が入りにくいのか、どの時期に痛みがあるのかなどを確認しましょう。どういったリハビリテーションがその人に必要なのか分かる可能性があります。
ぜひ、実践しながら歩行を観察する力をつけていきましょう。そして折角、歩行を観察するのであればデータとして残せる様、歩行解析デバイスを用いましょう。
AYUMI EYEは腰に装着して10m歩くだけで歩行速度、歩幅、歩行周期などの解析を行うことができます。歩行解析のための専用の設備は必要ありません。リハビリテーションの効果を患者様に実感していただくためにもぜひ導入をご検討ください。